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燃料電池自動車に係る規制の一元化について

燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)では燃料電池の実用化の促進に向けて燃料電池及び水素に係る規制の合理化に取り組んでいる。2016年度に規制改革ホットラインに提案した業界要望は、2017年6月9日の規制改革実施計画に反映され、関係各省庁で検討することが閣議決定された。これを受けて経済産業省においては「水素・燃料電池自動車関連規制に関する検討会」を設置し、継続的に議論を行ってきており、FCCJ提案の21項目中これまでに15項目が措置済みとなっている。残った難しい課題のうちの一つが「燃料電池自動車に係る規制の一元化」であり、それを実現するための高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案が去る令和4年6月15日に国会で成立したので、以下それについて解説する。

現状では燃料電池自動車については、道路運送車両法による規制に加えて、高圧水素容器等の部分について高圧ガス保安法の規制が課せられており、そのため製造事業者においては双方の法律についてそれぞれ登録審査手続きを行ったり、また不具合等が発生した場合にもそれぞれの法律担当部署に対応する必要がある。さらに燃料電池自動車のユーザーにおいても道路運送車両法によるいわゆる「車検」に加えて、高圧ガス保安法上の「容器再検査」を受ける必要があるということで二重の負担を負うことになっている。車検が初回登録から3年、その後は2年ごととなっているのに対し、容器再検査は初回が4年1か月、その後は2年3か月ごととなっており、時期が全く異なっている。また、自動車の国際的な流通の円滑化を図るうえで重要な役割を果たす型式認定に係る相互承認の枠組みの中で燃料電池自動車が2法令により規制されているのは日本のみであり、国際調和の観点からも一元化の必要性が高かったところである。

今回の法律改正では、道路運送車両法により安全が確保できる高圧ガスに関し、新たに高圧ガス保安法の適用除外とすることとされた。その結果、圧縮水素だけでなく圧縮天然ガスや液化天然ガスを使った自動車の原動機及び燃料装置が高圧ガス保安法の適用除外とされることとなった。本件規制見直しが国会での審議が必要な法律改正事項であることから慎重な検討が必要であったことは理解できるが、発売開始から10年に満たない燃料電池自動車はともかくとして、すでに25年以上の歴史を持つ天然ガス自動車の適用除外がやっと実現したという点についてはやや遅きに失したと思われるところである。

なお、今回の法律改正の内容についてさらに補足すると、

  • ➀高圧ガス保安法の適用除外となるのは、道路運送車両法により安全が確保されるもののみであり、車検切れの車両や車検を受けず私有地内でのみ走行する車両は、道路運送車両法で安全が確保されないため、引き続き高圧ガス保安法が適用される。
  • ➁具体的な車種としては、普通自動車、小型自動車、軽自動車は適用除外の対象となるが、大型特殊自動車は私有地内の利用が主であることから高圧ガス保安法で対応する。
  • ③適用除外の対象となる装置は高圧ガスを主に動力伝達装置の駆動用燃料として使用する装置(原動機及び燃料装置)に限ることとし、例えばタンクローリーの高圧ガス運送用のタンク内の高圧ガス等については引き続き高圧ガス保安法で対応する。

2023年中の施行に向け、細部の詰めが急がれるところである。

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