新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-

「日本のエネルギーの安定供給の再構築」について

令和4年7月27日に総理官邸において第1回のGX実行会議が開催された。同会議の趣旨については、「産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革、すなわちGX(グリーントランスフォーメーション)を実行するべく、必要な施策を検討する」こととされている。そして同会議の大きな論点としては、①日本のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる施策、②それを前提として、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への今後10年のロードマップの二つがあげられている。②は①を前提としているので、まずは①について議論するということで、8月24日の第2回会合では西村経済産業大臣から「日本のエネルギーの安定供給の再構築」と題する資料が提出された。以下その概要について解説する。

まず世界の動きとして、ロシアのウクライナ侵攻に起因した石油・ガス市場のかく乱、新興国のエネルギー需要の増大、他方で化石資源への投資の減少からくる化石資源のひっ迫・不安定化、また今後増やしていくべき再エネ分野における機材の生産能力の中国への依存(太陽光パネルや風力発電タービン等)、さらに原子力についても中国・ロシアが先行している現状等を挙げている。次に我が国のエネルギー政策の遅滞として、電力の自由化を進める中での供給力不足に備えた事業環境整備の遅れや原子力発電所の再稼働の遅れにより電力需給がひっ迫しており、また再エネ大量導入に向けても系統の整備や調整力の確保が遅れていると指摘。

そのうえで、当面の対応として

  • ⅰ)アジア諸国と連携して、LNG上流投資や危機時の協力について検討等を行うとともに、生産国への増産働きかけを実施
  • ⅱ)電気・ガスの事業者間におけるLNG融通の枠組みや、都市ガス用のLNGを公的に調達する枠組みを整備
  • ⅲ)今冬に向け休止火力を含めた電源の追加公募・稼働加速
  • ⅳ)再エネの出力安定化に向けた設備点検の強化や併設蓄電池の促進、FIP制度の推進
  • ⅴ)対価型デマンドレスポンスの拡大
  • ⅵ)家庭部門の省エネ促進、住宅の省エネ促進
  • ⅶ)原子力については、安全対策工事の短縮努力や定期検査スケジュールの調整等により再稼働済み10機のうち最大で9基の稼働確保、設置変更許可済み7基については再稼働に向けて国が前面に立って対応

等をすることとしている。

加えて中長期の対応として、再生可能エネルギー分野、原子力分野、電力システム、資源確保、産業分野での省エネ・非化石投資の抜本推進等について検討することとし、そのうち再エネと原子力については、さらに今後の進め方について説明している。新聞報道等でも指摘されているように本件GX実行会議及び「日本のエネルギーの安定供給の再構築」の一つの大きな狙いが原子力発電所の再稼働や運転期間の延長等原子力分野にあることは明らかであり、またそれは我が国にとって必要不可欠のことと思われるが、当財団のキーワード解説としては、やはりもう一つの柱である「再エネ政策の今後の進め方」について、以下に紹介することにする。

  • (1)再エネ大量導入に向けた系統整備/調整力の確保
    • 次世代ネットワークの構築……北海道~本州の海底直流送電の整備、東西の更なる連系に向けた50/60Hz変換設備の増強、本年度中に策定予定のマスタープランに基づく系統整備等
    • 調整力の確保……定置用蓄電池の導入加速、長期脱炭素電源オークション(蓄電池、揚水、水素等の脱炭素電源に対する投資を促す仕組みの早期具体化)、水素・アンモニアの活用(国際水素サプライチェーンの構築、余剰再エネ等を活用した水電解装置による国産水素の製造)
    • イノベーションの加速……次世代太陽電池、洋上風力
  • (2)国産再エネの最大限の導入
    • 事業規律の強化に向けた制度的措置の強化
    • 入札制度の活用・新制度(FIP)の導入
    • 地域と共生した再エネの導入拡大(公共部門の率先実行、改正温対法に基づく促進地域制度等を通じた地域共生型再エネの推進)
    • 既設再エネ(太陽光約60GW)の最大活用(増出力、長期運転に向けた追加投資の促進)

そして、この第2回GX実行会議を受けて、総合エネルギー調査会では令和4年9月28日に基本政策分科会を開催し、並行して進められている他の分科会とともに年内を目途に取りまとめを行うべく検討を開始している。

【参考資料】

  • ・R4.8.24第2回GX実行会議資料1「日本のエネルギーの安定供給の再構築」
  • ・R4.9.28総合エネルギー調査会第50回基本政策分科会資料1「エネルギーの安定供給の再構築」
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