全国の多目的ダム・利水ダムの有効貯水容量は、令和2年4月時点で約180億m3であるが、水力発電・農業用水・水道等のための利水容量(約128億m3)が大きく、治水(河川の氾濫の防止)を目的とした洪水調節容量は約55億m3とダム全体の約3割となっていました。
このため、政府は、国土交通省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・資源エネルギー庁・気象庁等で構成される「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」を設置し、「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針」をとりまとめました。
台風第19号等を踏まえ、水害の激甚化、治水対策の緊要性、ダム整備の地理的な制約等を勘案し、緊急時において既存ダムの有効貯水容量を洪水調節に最大限活用できるよう、関係省庁の密接な連携の下、速やかに必要な措置を講じることとし、既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本的な方針として、本基本方針を定める。
本基本方針に基づき、全ての既存ダムを対象に検証しつつ、以下の施策について早急に検討を行い、国管理の一級水系(ダムが存する98水系)について、令和2年の出水期から新たな運用を開始するとともに、都道府県管理の二級水系についても、令和2年度より一級水系の取組を都道府県に展開し、緊要性等に応じて順次実行していくこととする。
利水ダムにおける「事前放流」(治水対策)は、台風の接近などにより大雨となることが見込まれる場合、利水のために確保された容量に大雨の時により多くの水をダムに貯められるよう、河川の水量が増える前に利水を目的として貯められている水をダムから放流し、一時的にダムの水位を低下させるものです。
国土交通省は、既存ダムの有効貯水容量を洪水調節に最大限活用できるよう、国土交通省所管ダム及び河川法第26 条の許可を受けて設置された利水ダムを対象に、事前放流を実施するにあたっての基本的事項をとりまとめた「事前放流ガイドライン」(令和2年4月)を策定しています。
【参考資料】