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再生可能エネルギーの導入拡大に向けた関係府省庁連携アクションプラン

令和5年4月4日に再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議が開催された。同会議についての新聞報道等では、総理が平成29年に策定された水素基本戦略の改定を指示したことに焦点が当てられていたが、同会議での決定事項は表題のアクションプランであった。ただ、このアクションプランには正確には「「GX実現に向けた基本方針」を踏まえた」という前振りがついており、本年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」を具体化するためのものであったことから、一般向けにはニュースバリューに乏しいとされ、水素に焦点を当てた報道になったものと思われる。しかし、再エネ関係者にとっては、具体的な国の動きを知るという意味でこのアクションプランは重要であり、そのなかから特に今後1年程度の間に行われる事柄を中心にポイントを整理する。

  • (1)イノベーションの加速
    • イ)ペロブスカイト太陽電池については2023年度からユーザー企業と連携して実証を開始。
    • ロ)浮体式洋上風力については、2023年夏を目途に官民協議会を開催し、産業戦略及び導入目標を年度内に策定する。
  • (2)次世代ネットワークの構築/調整力の確保
    • イ)北海道からの海底直流送電については、2023年度内に以下のことを行う。
      • ・プロジェクト組成のためのファイナンスの枠組みを具体化する。
      • ・具体的な敷設ルート案の作成に向けた調査や関係者との調整等の環境整備を行う。
      • ・併せて地元理解の促進や手続きの円滑化を図る。
    • ロ)2030年に向けた定置用蓄電池の導入見通しを、2023年夏を目途に策定する。
    • ハ)配電系統レベルでの再エネ発電と需要のバランスを確保するための蓄電池等を活用した系統混雑緩和の実証を2024年度に本格的に開始する(2023年9月に予算要求との趣旨と理解)。
    • ニ)2023年度に導入予定の長期脱炭素電源オークションにより、揚水発電や蓄電池などの脱炭素型調整力の確保を推進する。
  • (3)需要側による取り組み
    • イ)デマンドレスポンス(DR)の取り組みについての改正省エネ法による定期報告を2023年度から義務化。また、DRの実績についてのより高度な報告・評価の方法を2023年度中に議論し具体化する。
    • ロ)省エネ法定期報告の任意開示を2023年度から試行運用し、2024年度からの本格運用の制度設計につなげる。
  • (4)地域と共生した再生可能エネルギーの導入拡大
    • イ)事業用太陽光について、2023年度下期より屋根設置の買取区分を創設し、導入を促進。
    • ロ)既存ダムの活用による発電量増加のポテンシャル調査を2023年度早期に行う。
    • ハ)地産地消型で地域経済活性化にも貢献する地方自治体出資の地域エネルギー会社等による地域共生型再エネの導入を2024年度から支援する(2023年9月予算要求との趣旨と理解)。
  • (5)適切な事業規律の確保
    • イ)事業規律の強化を図るため今国会にGX脱炭素電源法案を提出しているが、その成立・施行を待つことなく、省令改正等で行える対策については2023年夏ころまでに実施。
    • ロ)衛星データを含め地理情報を一元化し、各発電設備の立地情報を反映・充実化する情報システムを2023年度中に構築。
    • ハ)太陽光パネル等の廃棄・リサイクルについての在り方に関する検討を速やかに開始し、2023年内を目途に結論を得る。

閣僚会議の決定資料にはそれぞれの事項について関係する省庁が明記されているので、詳細については下記資料を参照されたい。

【参考資料】

  • ・令和5年4月4日 再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議 「GX実現に向けた基本方針」を踏まえた再生可能エネルギーの導入拡大に向けた関係府省庁連携アクションプラン
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