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石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術の開発・実証について

水素を低コストで効率良く輸送・貯蔵できるアンモニアは、エネルギーキャリアとしての役割に加え、火力発電の燃料として直接利用が可能であり、燃焼時にCO₂を排出しない燃料として、温室効果ガスの排出削減に大きな利点があると期待されている。脱炭素社会の実現には、イノベーションによりアンモニアの混焼率を拡大し、石炭火力発電から排出されるCO₂を削減することが重要。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業/燃料アンモニアサプライチェーンの構築プロジェクトにおいて、株式会社JERAおよび株式会社IHI、三菱重工業株式会社が、アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化に関する事業の採択を受けた。

●研究開発項目:アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化
●研究開発内容:石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術(専焼技術含む)の開発・実証

採択テーマ 提案者
事業用火力発電所におけるアンモニア高混焼化技術確立のための実機実証研究 株式会社 IHI
株式会社 JERA
アンモニア専焼バーナを活用した火力発電所における高混焼実機実証 三菱重工業株式会社
株式会社 JERA
  • (1)事業用火力発電所におけるアンモニア高混焼化技術確立のための実機実証研究

    JERAとIHIは、NEDOの助成事業として、JERAの国内最大の石炭火力発電所・碧南火力発電所4号機において、燃料アンモニアを20%混焼する技術の確立に向けて実証事業に取り組んでいる。

    本事業は、新たにアンモニア高混焼バーナを開発し、同バーナを碧南火力発電所4号機または5号機に実装し、アンモニアの混焼率を50%以上に拡大させることを目指すもので、事業期間は2021年度から2028年度までの約8年間。

    2024年度までに、50%以上のアンモニア混焼が可能なバーナを新規開発するとともに、ボイラを始めとした設備の仕様などを検討する。その結果を踏まえ、碧南火力発電所における同バーナの実装可否を判断します。実装する場合、2028年度までに、実機で50%以上のアンモニア混焼を開始する計画。

  • (2)アンモニア専焼バーナを活用した火力発電所における高混焼実機実証

    JERAと三菱重工は、石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術の開発・実証に取り組んでいる。

    本事業は、石炭ボイラに適したアンモニア専焼バーナを開発し、実機で実証運転することを目指すもので、事業期間は2021年度から2028年度までの約8年間。

    2024年度までに、アンモニアの専焼が可能なバーナを開発するとともに、実機実証に向けて設備の基本計画を策定する。その結果を踏まえ、JERAの保有する三菱重工製の石炭ボイラでの実証可否を判断する予定。実機実証では2028年度までに、ボイラ型式の異なる実機2ユニットにおいて50%以上のアンモニア混焼を検証する計画。

【各社の取り組み】

  • ●株式会社JERA
    「JERAゼロエミッション2050」を掲げ、2050年時点で国内外の事業から排出されるCO₂の実質ゼロに挑戦している。火力発電についてはよりグリーンな燃料の導入を進め、発電時にCO₂を排出しないゼロエミッション火力を追求。今後とも、主体的に脱炭素技術の開発に取り組むとともに、経済合理性を確保すべく努力を重ねていくことで、エネルギーの脱炭素化に貢献する計画。
  • ●株式会社IHI
    水素・アンモニアの利用技術開発やサプライチェーン構築を積極的に推進している。また、CO₂の有効利用のためのカーボンリサイクル技術など、カーボンニュートラルを実現する多様なソリューションを提供することで、脱CO₂・循環型社会の実現に貢献する計画。
  • ●三菱重工業株式会社
    「MISSION NET ZERO」を掲げ、CO₂削減に貢献できる製品・技術・サービスを通して、世界中のパートナーとの協調によりエナジートランジションを推進し、グループの総合力を結集してカーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献する計画。

カーボンニュートラルの実現には、発電電力量の約1/3を占める石炭火力発電のCO₂削減策の実施が不可欠である。発生するCO₂のリサイクルとともに、アンモニアや水素の混焼は重要な施策の一つである。本事業の今後の成果に期待したい。

【参考資料】

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