令和3年5月26日、「改正地球温暖化対策推進法」が日本国国会で成立し、いろいろな意味で記念すべき日になった。日本は“2050年の温暖化ガス排出量を実質ゼロ”にする目標を基本理念として明記している。エネルギー大転換の時代になる予兆を示している。
これは非常に野心的な目標であり、本当に達成できるのか?、どこまで達成できるのか、とこれから日本国一丸となって取り組んでいかないといけない状況である。
このような時、今回紹介する書籍は今どきの時代背景を多くの視点から整理・紹介していて、エネルギー・環境分野での諸研究開発・実用化を進めていくときの有益な参考になると考えられる。
歴史を振り返ると、人間社会でのエネルギー利用について、水力、風力と共に火(マキ)は古くから利用されてきた。マキは人類に灯りを与えるとともに、温かさをもたらしてきた。さらに、水を沸かすことにより水蒸気を発生させ、蒸気圧により動力を得てきた。
この時、火を得る原料として、マキから木炭、石炭、油へと、人が扱いやすくかつより力強い動力を得られる形態の原料を使用するようになってきている。
このように火を使用する場合、原料の種類により、各エネルギー時代の呼称を与えられたりもしている。
ところが、近年の気候変動と地球温暖化との関連が懸念されてくると、地球温暖化に関わるとみられる二酸化炭素を排出する化石燃料(石炭、石油、燃料ガス)の利用削減を求める国際条約が締結されるようになってきている。
以上のように、人間社会でのエネルギー利用については「時代」と呼ばれる、特徴的な利用状態が垣間見れると思う。
そこで、今回、紹介する書籍では、著名な著者が日頃から社会に開示されている、「現代のエネルギー利用状況」「エネルギー利用における課題」「エネルギー利用の動向」「今後のエネルギー利用についての考察」等について、電気新聞の時評“ウェーブ”等で発表されていた小編記事を再構成し、「近代以降のエネルギーの歴史を振り返ると今は大きな区切りの時」との考えから著者の考えを纏められ、テーマ毎に表現して、著者の研究活動の古稀マイルストーンとされている。
現在、電力・エネルギー産業分野で大きな地殻変動が起きている。
国内では1995年の発電分門の自由化から始まり、2020年の送配電の分離中立化で電力自由化の制度的な大枠が供用開始されたが、幾つかの分野でさらなる調整が求められている。
再生可能エネルギーの普及により国内での電力供給偏在が生まれて電力安定供給に大きな影響を与えていること、再生可能エネルギーによる賦課金により電気料金に大きな課題を与えていること、発電用燃料と共に産業部門・輸送部門の燃料による二酸化炭素排出問題が世界的に大きくなってきていること等が問題になっている。
本書では以上のような背景をとらえつつ、今後のエネルギー利用をどのように組み立てていくと良いかを考える時に貴重な視点を与えるとともに、今のエネルギー社会の見直しを行う際にも有益なものと考える。
本書の構成は、次の全8章からなっている。
書籍:「エネルギー 新時代の夜明け」
著者:山地 憲治 発行:株式会社エネルギーフォーラム
2020年8月29日 初版 定価:1600円(税別)
電気新聞:時評”ウェーブ”
経済産業省HP:総合資源エネルギー調査会各委員会資料