新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-

次世代バイオ燃料について

エネルギー供給構造高度化法に基づく石油精製業者の非化石エネルギー源の利用目標については、「バイオエタノールを原油換算で50万キロリットル利用する」という2017年度の目標を増やすことなく2018年度から2022年度まで横ばいとされている。これは、2017年度の目標は達成されたとはいえ、全量をブラジル1国からの輸入に依存した状態では、これをさらに増やすことはエネルギーセキュリティ上問題があるとの認識に基づくものである。

2023年度以降の全体目標については、現時点(2022年8月)では未定とされているが、他方で、2020年3月に目標の一部改定が行われ、2023年度以降のことについてすでに二つの目標が定められている。

その一つが次世代バイオエタノールの利用目標である。2023年度から2027年度までの5年間、各年度毎にエタノール換算で原則1万キロリットルの次世代バイオエタノールを利用することとされている。従来のトウモロコシ、サトウキビ、小麦等から作られるバイオエタノールを第1世代のバイオエタノールとし、これらとは異なり食料と競合することのない草本や木本等のセルロース系原料から作られるもの(CO2削減率の大きいものに限る)、古紙等のリサイクル品のセルロース系原料から作られるもの、さらにカーボンリサイクル技術を使って水素と二酸化炭素等を合成して作られるものを「次世代バイオエタノール」とし、先行的に利用目標を定めておくことにより、その開発導入を進めようとするものである。

その前段階の取り組みとしてNEDOでは2014年度から2019年度に「セルロース系エタノール生産システム総合実証」というプロジェクトを行っている。プロジェクトはNEDOの事後評価報告書によれば成功したようであるが、残念ながら事業化には結びついておらず、次世代バイオエタノールの利用目標の達成の目途は今のところ立っていないようである。技術的には目途が立ったとしても、他方で固定価格買取制度(FIT制度)の下でバイオマス発電事業者が燃料となるバイオマス資源を買い集めている状況ではバイオエタノール燃料の事業化は難しいかもしれないところである。

そしてもう一つがバイオジェット燃料の利用である。航空機の場合、国際線の運航もあるため、CO2の削減については、国際民間航空機関(ICAO)が中心となって進めていることに加え、現状では世界的に見てもバイオジェット燃料については、廃食用油等を利用したものを除き研究開発・実証段階であるものがほとんどであるためか、今回、具体的な数量目標の設定までは行われていないが、その導入を促進するため、バイオジェット燃料の利用も発熱量でエタノールに換算してバイオエタノールの利用目標の達成のため参入できることとしており、かつ次世代バイオジェット燃料(上記次世代バイオエタノールと同様の原料によるものに加え、微細藻類、廃食用由、動物性油脂等を原料とするものも対象)についてはその利用量を2倍にして計上できることとしている。

これについてもNEDOでは2017年度から2024年度の7年間の計画として「バイオジェット燃料生産技術開発」プロジェクトを実施中であり、2021年6月には木質セルロースをガス化したうえで液体燃料を合成する方法と微細藻類由来の油を精製する方法の二つの方法により作られたバイオジェット燃料を国内の航空路線の定期便に試験的に提供している。

石油精製業者の非化石エネルギー源の利用をめぐる今後の動向については、上述したように2023年度以降の全体計画の検討に委ねられるところであるが、状況としては自動車用が主たる用途である次世代バイオエタノールよりはバイオジェット燃料に重点が移行しそうである。自動車については、他に電気自動車や燃料電池車という選択肢も存在するが、航空機についてはエネルギー密度の高さから液体燃料の利用が不可欠であり、また、信頼性の観点からも既存のジェットエンジンの継続的な利用が優先されると思われることから、持続可能な代替航空燃料(SAF)への期待が高まると考えられるためである。

ページトップへ