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持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会中間とりまとめ

令和5年5月26日に資源エネルギー庁において持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会が開催され、中間とりまとめが行われた。これに先立って5月16日に行われた合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会の中間とりまとめ(別稿にて解説)と対をなすもので、前者が主として自動車用の燃料を念頭に置いているのに対し、後者は航空機用の燃料を対象にするものである。自動車分野の脱炭素化については、電気自動車、燃料電池自動車等他の選択肢もある中で「多様な道筋」として合成燃料(e-fuel)の利用もありうるというところでの検討であるのに対し、航空機分野の脱炭素化については、現状で見通せる将来においては航空機燃料の脱炭素化が中心にならざるを得ないという状況で、加えて、昨年10月の国際民間航空機関(ICAO)総会において2024年以降は2019年比でCO2排出量を85%以下に抑えるという目標が決定されたことを受けての協議会の開催であり、前者の中間とりまとめに比べるとかなり緊張感のある中間とりまとめとなっている。

今回の中間とりまとめで示された対応策の概要は次のとおりである。

  1. 供給側において、必要十分なSAFの製造能力や原料のサプライチェーン(開発輸入を含む)を確保し、国際競争力のある価格で安定的にSAFを供給できる体制を構築するとともに、需要側においてSAFを安定的に調達する環境を整備していく。そのためには航空サービス利用者による費用負担増について理解を得つつ、SAFの利用・供給目標を法的に設定するとともに、政府による積極的な支援を検討する。
  2. 具体的な方策としては、以下のような事柄があげられている。
    • ①エネルギー供給構造高度化法において、SAFの2030年の供給目標量を法的に設定する。需要側のニーズを踏まえ、少なくとも航空燃料消費量の10%(171万kl相当。このうち本法エアライン分の利用目標量は88万kl。残りは外航エアラインが復路用に利用と想定。)とする。(現在、エネルギー供給構造高度化法に基づく告示においては主として自動車燃料分野を念頭にバイオエタノールについての供給目標が定められており、SAFもその一部として取り扱われているが、単独での目標量は定められていない。)
    • ②本法エアラインは、航空法に基づく事業認可で、ICAOのカーボンオフセットスキーム(CORSIA)の達成義務が課されているが、それに加えて、昨年の航空法改正により義務付けられた航空脱炭素推進計画において2030年のSAF利用目標(10%)を設定することとする。
    • ③支援策としては、空港のSAF受け入れ施設・設備等の整備をはじめとした十分な水準の設備投資支援に加え、原料等サプライチェーンの構築支援((株)海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)による出資、JOGMECによる出資・債務保証の検討(法改正が必要)。また、SAFの原料やSAFの輸入に際しての関税や石油石炭税の減免等の検討。
    • ④非可食由来SAFに係る技術開発・実証に加え、国内SAF事業者のICAO・CORSIAの適格燃料の認証取得への支援(先行事業者の取り組みについてのケーススタディ調査やガイドラインの作成による知見の共有)
  3. 上記1.2.が2030年に向けた対策の基本的な枠組みであるが、これに加えての喫緊の課題が「国産原料の利用拡大に向けた環境整備策」である。ここでいう国産原料の中心となるのは「廃食油」である。我が国の食用油の年間消費量は、248万トンで、このうち50万トンが廃食油として発生し、回収・処理を経て38万トンが再利用可能となっているが、このうち12万トンがヨーロッパや韓国に輸出され、SAF原料になっているとのことである。これを含め国内のバイオマス資源を何とか国内でSAFにすべく資源エネルギー庁、農水省、環境省、国土交通省が連携して取り組むべく年内を目途にアクションプランを作るとのことである。

以上が官民協議会の中間とりまとめである。協議会での検討も引き続き行われるであろうし、さらには総合資源エネルギー調査会等での審議も必要であることから、この内容がすぐに政策になるものではないが、いずれ我々の暮らしに影響が及ぶものと考えられる。やはり急ぐべきは新幹線の整備かもしれない。

【参考資料】

  • ・令和5年5月26日持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会資料6、資料7
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