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水力発電所の設備更新による出力および発電電力量の増加について

水力発電所は国内に2,000箇所程度ありますが、実にその半数以上の発電所が運転を開始してから60年以上が経過しています。水力発電は他の発電方式と比較して設備の耐用年数が長いため、補修を繰り返しながら大切に使われてきました。各発電所の建設にあたっては、その当時の新しい技術をもって建設されてきたのですが、数十年が経過した設備に対して最新技術を用いることで、既設の設備よりも性能面で改良することが可能です。そのため、水力発電所の出力や発電電力量の増加を目的とした設備更新工事が、各水力発電事業者によって積極的に行われています。

これまで水力発電設備の中でも、心臓部ともいえる「水車」について盛んに研究開発が行われてきました。中でも特に、コンピュータを利用した流れ解析技術(CFD)の発展が挙げられます。流れ解析は水車ランナ※1等を含んだ水車のモデルを対象に解析を行うもので、発生する損失の大きさやその原因を明らかにし、損失を低減させる新たな水車形状を検討するといった手順で行われ、水車性能を向上する上で大きく活用されています。この流れ解析技術を用いることで、従来形状と異なる新形状の水車ランナが開発されています。近年の設備更新においてはこのように開発された水車へ取替えることにより、水車効率の向上が図られています。水車効率が向上することで、発電所の出力や発電電力量の増加に繋がっています。

※1:水の流れにより回転する羽根車であり、水車において最も重要な部品である。水の位置エネルギーを軸トルク(回転エネルギー)に変換して発電機に伝達する。この変換する効率が水車効率となる。

この水力発電所の設備更新については、国(経済産業省)も積極的に支援しています。設備更新を行おうとする方々(水力発電事業者)は、国の制度である固定価格買取制度(リプレース区分)や補助金(設備更新補助金)を上手に活用することで、コストを抑えながら最新技術を用いた設備へ更新する工事を行うことが可能です。

既設の設備を更新しながら長期間にわたって有効活用する、また限られた水資源を最大限に利用するという観点から、非常に有効な取り組みです。

発電所の出力は P=9.8 × Q × H × ηWT × ηGE で計算されます。

ここで、P:出力[kW]、9.8:重力加速度、Q:使用水量[m3/s]、
H:有効落差[m]、ηWT:水車効率[%]、ηGE:発電機効率[%] です。

上式より、使用水量や有効落差を既設設備から変更することなく、水車効率を向上することで出力増加が可能になることが分かります。またこれにより発電電力量(W:[kWh])も増加させることができます。

【参考文献】

  • ・「令和元年度 新エネルギー人材育成研修会(水力発電コース)テキスト」新エネルギー財団
  • ・「水力発電の開発促進と既設水力の有効活用に向けた提言」新エネルギー財団
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