水力発電は、山間地また河川近傍に位置することから、発電所の建設計画時に洪水への対策を検討する必要がある。
国内では、毎年のように洪水による水害が起きている。「数十年に一度の大雨」と定義される大雨特別警報は2013年の制定以来、2020年までの8年間で16回発報されており、各地で大きな被害をもたらしている。
また海外においても、最近の事例としては、ドイツ、ベルギーを中心とするヨーロッパや中国において豪雨による大規模な水害が発生している。
水力発電においても水害対策は重要であり、発電所設置場所を検討する場合、水害が発生しにくい場所を選ぶ必要がある。「中小水力発電ガイドブック」(新エネルギー財団発行)では、「発電所位置の選定」に留意すべき5項目の内、「洪水により被害を受けず、河川の衝突しない所」を2番目に挙げている。具体的には、「小水力発電を河川区域内に設置する場合のガイドブック(案)」(国土交通省発行)では、設置を避けることが望ましい場所として狭窄部、水衝部、支派川の分合流部を挙げている。
また洪水に耐えるための各発電設備/機器の設計も重要である。例えば、洪水に耐えられる取水設備の設計や、水車・発電機などの発電機器を洪水による浸水から保護する設計などが挙げられる。
これらの洪水対策を俯瞰的に示すものとして、金融機関が小水力発電向け融資を検討する際の手引きである「地域における再生可能エネルギー事業の事業性評価等に関する手引き(金融機関向け)~小水力発電事業編~」(環境省大臣官房環境経済課発行)の記述の一部を以下に示す。
【参考:(小水力発電)事業者が行う対応策の例】
機器や設備の洪水に対する設計のみならず、洪水による被害が発生するという前提で、保険への加入等の対応も検討することが必要である。
【参照文献】