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水車の寿命診断

低炭素社会の実現に向けて、水力の担う役割は大きく、水資源に恵まれた日本では、発電への利用も昔から盛んで国内で賄うことのできる貴重なエネルギー源となっている。一方、高経年化した設備を利用し続けている実態から、経年水車の更新を効率的かつ経済的に行うため、適切な寿命評価が求められている。

以下、水車の寿命評価のための劣化診断のうち非破壊検査について説明する。

  • 1.非破壊検査とは
    非破壊検査とは "物を壊すことなく" その欠陥や劣化の状況を調べ出す検査技術のことをいう。
  • 2.非破壊検査の種類
    • (A)目視検査
      目視による表面の傷、割れ、表面の錆の状態を確認する。
      水車においては、通常運転時における外観とオーバーホール等の分解を伴う機会に、内部について目視確認を行う。誰でも機材なしでいつでもできるが、客観的・定量的な判断が難しい。
    • (B)浸透探傷検査(PT:Penetrant Testing)
      部材の表面を検査するもので、欠陥内部に浸透した浸透液が作る指示模様を見つけることにより、欠陥の存在を知る方法。鉄鋼材料のほか非鉄金属材料でも検査可能であり、複雑な形状や色々な方向の傷が共存している場合でも1回の操作で検査可能。多孔質材量の探傷は難しく試験品の表面粗さや、検査結果が検査員の技量に左右される。
    • (C)磁粉探傷検査(MT:Magnetic Particle Testing)
      表面及び表面下に磁束を遮るような欠陥があると、その部分で磁束が漏洩し、磁粉を散布すると欠陥部の局部磁場により磁粉が磁化し、そこに吸着された磁粉模様により欠陥の存在を知る方法。表面の割れに対しては、他の検査方法より一番優れており、割れが開口していない地キズのような欠陥でも検出できるが、磁性材でないと検出できないこと、また欠陥の位置・表面上の長さは判るが、深さは判らない。
    • (D)超音波探傷検査(UT:Ultrasonics Testing)
      高い周波数(通常0.5~5.0MHz)の音波、すなわち超音波を試験材に投入し、内部欠陥があるとそこで超音波の一部が反射される現象を利用して、欠陥の存在位置・大きさを知る方法。検査対象品の厚さに対する制限がなく、深さ方向の欠陥位置の測定が容易である。ブローホール(溶接における気孔欠陥)は検出しにくく、高度の熟練が必要。
    • (E)放射線探検査(RT:Radiographic Testing)
      X線、あるいは放射線同位元素から出るγ線などの物質透過力の強い放射線を利用して検査する方法。欠陥の形状を直観的に知ることができ、ブローホールは比較的検出しやすく、結果の保存性が良い。開口の小さな欠陥(割れ)の検出には不適当で、検査費が高価となる。
    • (F)スンプ法による金属組織検査(SUMP法)
      磁粉探傷検査で検出された腐食による金属組織的損傷、及び欠陥の進展程度を特殊なフィルムに転写して顕微鏡にて組織観察する。欠陥性状を金属組織的に把握でき、進展性も確認できるがフィルムに転写するまでの手間がかかる。
  • 3.検査結果による寿命診断
    各検査により得られた欠陥の結果によっては、部品の修理(溶接補修等)や取替を行いながら水車の延命化を図っているが、現在の診断技術も完全なものではなく、残存寿命を絶対値として算出することは容易ではない。
    現在運転中のすべての水車についても、ケーシング形状や製作当時の製造技術・運転方法など同じものはなく、一概に製造年度や運転年数だけでとか、あるいは欠陥の有無の大小だけで更新する、または運転継続を決めることはできない。
    むしろ、予防保全的な面から、ある程度年数が経過した水車については、継続的な老朽度調査と万一、重大な欠陥が発見された場合は、無理して延命させるより、更新した場合のメリット(人手をかけずに安心して運転継続でき、新設計による出力アップや近代化を盛り込んだメンテナンスフリーが図れる)などを経済比較し計画的に水車更新していくことが望ましい。
  • 4.最新の検査技術
    東北電力株式会社様では、従来の超音波探傷技術と三次元空間座標計測技術を統合した、「三次元超音波探傷装置(3D-UT)」を開発し、実機に適用している。

【参考文献】

  • ・一般財団法人 新エネルギー財団 中小水力発電技術に関する実務研修会テキスト
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