国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が2023年2月13日付で公表した水力発電に関する提言書について解説します。
一言でいえば、パリ協定で定めた1.5度目標達成のためには水力発電について大幅な投資促進が必要だとしています。揚水発電を含む水力発電の設備容量(installed capacity)が2050年までに倍以上になる必要があり、そのためには、水力発電への年間投資額をおよそ5倍までアップする必要があると指摘しています。
キーメッセージを要約すると以下の1~10の通りです。
【筆者コメント】
同報告書は、先進国や発展途上国を含む世界全体の水力発電事情に関する総括的な考察ですが、日本の状況を考える場合にも、大いに役に立つ内容であると思われます。日本では、最近、太陽光・風力といった変動性再生可能エネルギー(VRE)の大量導入が急速に進んでいます。同報告書で水力発電の果たす調整力やアンシラリーサービスといった機能の重要性が強調されているのは興味深いです。さらに、調整力の観点から、揚水発電の重要性を強調している点は、日本の現在のエネルギー政策における議論と波長がよく合っています。規制のありかたや電力市場における価値の再評価、投資環境の整備についても、日本の長期脱炭素電源オークションなど最近の制度整備状況とよく符合している印象を受けました。
【参考文献】