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超臨界地熱発電への期待

現在NEDOで超臨界地熱発電の技術開発が行われています。超臨界地熱発電とはどのような発電なのでしょうか。超臨界地熱発電における「超臨界」とは、「超臨界水」のことです。液体である水は、圧力1気圧(大気圧)で沸点100℃に上昇すると気体(水蒸気)になります。圧力を挙げた場合、沸点は上昇し、2気圧で沸点は121℃程となります。圧力をもっと上げていくと、22.1MPa(218気圧)で沸点は374℃に達しますが、それ以上になると液体と気体の区別が無くなってしまいます。温度374℃、圧力22.1MPaを臨界点と呼び、それ以上の温度と圧力を持った水を超臨界水と呼びます。

超臨界水は多大なエネルギーを持っています。火山地帯の5kmほどの深部には500℃程の超臨界水が存在すると推定されています。今までの地熱発電所では高くても200℃台の蒸気を使用していたので、超臨界水を利用した発電方式でしたら、1つの発電所で大出力化が図れると考えられています。一説によると、原子力発電所なみの発電量が得られると言われています。

しかし、超臨界地熱発電の実現に向けては多くの課題があります。5kmほどの大深度にあると想定される超臨界水がどのような状態で存在し、貯留層はどのような形態となっているのでしょうか。超臨界水は、500℃程の高温であり、溶解性が高く、強い酸性になっている可能性があります。そのような流体を発電システムで使うために必要な機器や材料はどのようなものが必要なのでしょうか。坑井掘削についても、そもそも5kmの大深度ということで、時間もコストもかかりますが、500℃ほどのところを掘っていくための、鋼管やセメントの材料はどのようなものにするべきしょうか。これらには、多くの技術開発が求められます。

2016 年 に策定された「エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI2050)」において、超臨界地熱発電が、温室効果ガス排出量を削減するポテンシャルが大きい、有望な革新技術として紹介されました。それを受けて2017年にNEDOによる超臨界地熱発電の技術開発が始まりました。産学官一体となって超臨界地熱発電の技術開発に取り組まれ、この夢のある事業が達成されることを大いに期待しています。

【参考資料】

  • ・2020 年度「超臨界地熱発電技術研究開発」に係る公募要領
    国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
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