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地熱発電の持続可能性について

2011年の東日本大震災以降、国も再生可能エネルギーの普及を推進させるべく諸施策を打ち出してきました。長期間停滞が続いてきた地熱開発についても、積極策が打ち出され業界は活況を呈するようになりました。特に再生エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)が大きな役割を果たしてきました。しかし、地熱発電は開発に手を付けてから運転開始までの期間が長い傾向にあり、特に10,000kWの大規模地熱発電所は、2020年7月現在で山葵沢地熱発電所の1件のみとなっております。

一方、地熱発電でも1,000kW未満の小規模地熱発電は、比較的短期間で運転開始まで進めることができますので、2011年の東日本大震災以降、中小企業者による数十件の運転開始が見込まれてきました。しかし、そこには潜在的な懸念も想定されるようになってきました。

固定価格買取制度の創設後の新規事業者の中には、地下の地熱資源の分布を必ずしも十分に把握しないまま開発を行う場合があり、既存の地熱発電所や周辺温泉への影響が懸念されていました。地熱資源開発には特有の事業リスクが存在するため、適切に地熱資源開発を進めるには、トラブルを未然に防ぐまたは万が一生じた場合に適切な対応ができるよう十分な準備をしておくことが重要です。自治体が事業の是非について判断される場合にも、このような技術的観点から考慮することが理想的ですが、地熱推進が図られた当初はその判断基準となるようなものが存在しませんでした。

影響が懸念されるケース
図 影響が懸念されるケース

資源エネルギー庁では、地熱資源の適切な管理と最大限の活用を図るため、2016年1月に「地熱発電の推進に関する研究会」を組織して、地熱資源開発に係る諸課題を整理し、その後の諸制度の在り方について検討しました。地方自治体が条例や協議会等を活用してこのような状況を回避することが有効であると判断され、その際の基礎情報として、同研究会で2016年3月にまとめられた平成 27 年度報告書の中で、「地熱発電の持続可能性に係る判断基準」を取りまとめました。

さらに同研究会が2017年3月にまとめられた平成 28 年度報告書の中で、「●●市地域と共生した地熱発電の導入等を図る条例(ひな形)」が示され、地熱発電の持続可能性に寄与するべく取り組みが行われてきました。これらの取組が、地熱の推進を図ろうとする事業者同士の交通整理に一定の役割を果たすことを期待するものです。

【参考文献】

  • ・「令和元年度 地熱開発技術者研修会テキスト」 新エネルギー財団
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