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地熱井の概要

地熱発電は、地下に賦存する蒸気や熱水の熱エネルギーを利用して発電する技術であり、調査、生産、還元の各段階で地熱井(坑井)が掘削されます。地熱井は高温の地層を冷却しながら掘削しますが、同じ地下資源開発である石油井は高い圧力の石油・天然ガスを抑圧コントロールしながら掘削するという基本的な違いがあります。

地熱井の掘削技術は、基本的に石油掘削技術を適用していますが、温度環境は石油掘削技術においては超ド級のカテゴリーに入ります。また、地下温度が300℃を超えるような地域では坑内トラブルが増加する傾向があります。

1 目的による分類
 地熱井は、地下構造および地熱流体の貯留状態を調査するため主に小口径で掘削される構造試錐井、地熱流体の流量や性状・還元量等を調査するために掘削される調査井、地熱流体を採取し発電に使用するために掘削される生産井、坑井より噴出した熱水等を地下へ還元するために掘削される還元井に分類されます。

2 掘削法による分類
 坑井を掘削する工法には、スピンドル式掘削法とロータリー式掘削法があり、掘削する坑井の目的に合わせて選択します。

2-1スピンドル式掘削法
 スピンドル式掘削法は、ボーリングマシン(試錐機)と呼ばれる掘削機を使用し、地質調査や鉱山の探鉱に用いられてきた工法です。掘削は、掘削機のスイベルヘッド内にボーリングロッドを通して、同ヘッドに付属したロッドチャックでロッドを固定、スピンドルを回転ならびに昇降させることにより行われます。ボーリングロッドには、コアバーレルとコアビットが接続され、掘削区間のほぼ全区間でコアを採取するコアボーリングが行われます。採取したコアは、ワイヤラインで回収します。また、一部のボーリングマシーンには、後述するロータリー式掘削法に用いるロータリーマシンを備えているものもあります。
 スピンドル式掘削法は、小口径のコア掘削に適しており、コアの採集率は高く、掘削機は比較的小型で機動性に富み、少人数の技術者で掘削作業を施工でき、掘削コストも低いという特徴があります。しかし、掘削機械の能力やボーリングロッドの強度から大口径掘削や深部掘削、傾斜掘りには適しておらず、ケーシングプログラムの制限が大きくなります。図1にスピンドル式掘削法の概要を示します。

2-2ロータリー式掘削法
 ロータリー式掘削は、ドローワークスやロータリーテーブル等を用いて掘削する工法で、石油井で用いられている工法です。掘削は、ドローワークスのドラムでドリルストリングスを吊下げ、スイベルに接続したケリーをロータリーテーブルで回転させることにより行います。ドリルストリングスの基本編成は、ケリーの下部にドリルパイプ・ドリルカラー・スタビライザー・ビットを接続し、全断面を掘削します。コアを採取する場合は、ドリルカラーの下部にコアバーレルとコアビットを接続して掘削し、コアの回収は全てのストリングスを揚管して行います。
 ロータリー式掘削法は、大口径の全断面掘削に適しており、ドリルストリングスの強度は高く、深部掘削、高傾斜コントロール掘削、高温度部の掘削も可能で、掘削流体は泥水、清水、空気、空気混合泥水を選択できます。しかし、コアの採取は基本的にスポットコアとなり、掘削機は比較的大型で広い敷地と、作業には多くの技術者が必要で、掘削坑径も大きいことから掘削コストはスピンドル掘削法より高くなります。図2にロータリー式掘削法の概要を示します。

スピンドル式掘削法概要
図1 スピンドル式掘削法概要
ロータリー式掘削法概要
図2 ロータリー式掘削法概要

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2019):「令和元年度 地熱開発技術者研修会テキスト」
  • ・新エネルギー財団(2003):「地熱調査井の堀削標準・指針(改訂版)」
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