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地熱開発による温泉への影響可能性(その2)

地熱開発による温泉への影響可能性(その1)の通り、温泉の源泉温度と化学成分によって、この5つのタイプにおおよそ分類することができますが、化学成分的にはこの典型的な5種に属さない2種類があります。それは、陰イオン成分としてHCO3-が卓越する「CO2付加型」と、強酸性の「火山ガス吹込型」です。図2に示す通り、CO2付加型については、CO2の起源が地熱貯留層である可能性がある一方、別の起源(岩石鉱物や土壌の有機物、又はマグマから直接など)の場合も多く、温泉帯水層と地熱貯留層との水理的関係が不明です。つまり、泉質のみからは5つのタイプのどのタイプに属するかを判別できません。他方、火山ガス吹込型は、強酸性の火山ガスがマグマから直接供給された経路しか考えられないため、地熱貯留層との水理的つながりはなく、5つのタイプの中で独立型(無関係型)に相当すると考えられます。

図2 CO2付加型と火山ガス吹込型温泉の成因 (Yasukawa et al., 2018)
図2 CO2付加型と火山ガス吹込型温泉の成因 (Yasukawa et al., 2018)
図3 7つの泉質タイプの分布概念図
図3 7つの泉質タイプの分布概念図

この2種類を加えた7種類の泉質タイプの分布範囲の概念図と、それぞれの分類方法を、図3と図4に示します。

図4 温泉の地化学特性に基づいたタイプ分けのフローチャート(安川・野田, 2017)
図4 温泉の地化学特性に基づいたタイプ分けのフローチャート(安川・野田, 2017)

地下探査技術と分析技術は進化していますが、温泉事業者と地熱開発事業者が信頼関係を築くためにも、現状を十分に把握し、科学的根拠に基づいた分析と説明が重要となってきます。

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2019):「令和元年度 地熱開発技術者研修会テキスト」
  • ・日本地熱学会(2010):地熱発電と温泉利用との共生を目指して.pp. 62.
  • ・安川香澄・野田徹郎(2017):温泉帯水層と地熱貯留層との水理・熱的関係についての温泉地化学的手法による分類.
    日本地熱学会誌, 39 (4), p.203-215.
  • ・Yasukawa, K., Kubota, H., Soma, N., Noda, T. (2018) :Integration of natural and social environment in the implementation of geothermal projects. Geothermics, 73, 111-123.
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