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地熱発電における熱力学
-エントロピとエンタルピ

地熱発電で、セパレータ(気水分離器)の圧力と分離される蒸気量や蒸気タービンの出力を計算する上で欠かせない水の物性値の中でも重要なものがエントロピとエンタルピです。詳しい技術的な解説は熱力学の教科書に任せるとして、ここではこれら物性値の性質や利用の仕方について解説し、セパレータや蒸気タービンの理解を深めていただければと思います。

全ての物質はエネルギーを持っており、エネルギーにはいろいろな種類があります。地熱エネルギーは熱エネルギーですが、他に位置エネルギー(高いところにあるものは位置エネルギーが高い。落差を利用する水力発電は位置エネルギーを利用している)、運動エネルギー(質量×速度、速度の速い物質は大きな運動エネルギーを持つ。スピードの速い自動車がぶつかるほうが被害は大きく、同じスピードでも軽自動車よりもトラックがぶつかる方が被害は大きい)、電気エネルギー、化学エネルギー(燃料電池の原理など)など様々です。熱エネルギーは一般に温度の高さでエネルギーの高さを知ることができ、熱エネルギーは温度の高い方から低い方に移動します。

熱力学にて熱力学第一法則(エネルギー保存則)と熱力学第二法則(エントロピ増大則)が解説されています。熱力学第一法則はご理解いただきやすいものと思いますが、例えばセパレータに入るエネルギー量とセパレータから出るエネルギー量は同じであるということを示します。セパレータでは蒸気の入出以外に取り出される仕事はありません。または、蒸気タービンに入る蒸気の熱エネルギーは、タービンから出る排気の熱エネルギー、タービンでの損失エネルギーおよびタービン出力の総和に等しいです。すなわち、熱エネルギーと力学的エネルギーを合わせて考えれば、状態変化の前後でエネルギーは増大も減少もせず保存されることを示しています。

熱力学第二法則はエントロピ増大則と言われたり、熱エネルギーは温度の低いところから高いところへは移動しないという解説をされたりしています。不可逆変化を伴えばエントロピは必ず増大することが知られている。

以上の考え方は火力発電設備において発電機出力を計算する上で基本となる考え方であり、地熱発電に対しても同様です。エンタルピは物質がもつエネルギー(内部エネルギー)の高さを示し、エントロピはエネルギーの品質を示すと考えることができます。蒸気タービンと発電機により蒸気の持つ熱エネルギーが電気エネルギーに変換されるとき、蒸気のエンタルピ減少分は電気エネルギーと蒸気タービン・発電機での損失の和に等しいです。すなわち、エンタルピにより示される高さのエネルギーが蒸気タービンと発電機により損失を伴いながら電気エネルギーに変換されます。

同じ高さのエンタルピであってもエントロピが大きい状態では取り出すことのできるエネルギーは小さく、エントロピが小さければ大きなエネルギーを取り出すことができます。この意味で「地熱開発技術者研修会テキスト」の筆者はエントロピがエネルギーの品質を示すと表現しています。

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2021):「令和2年度 地熱開発技術者研修会テキスト」

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