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地熱発電所の保護システム

地熱発電所においても火力発電所と同様の保護システムを備えます。通常に、例えば計画した蒸気圧力などで運用されている限りは機械設備も電気設備も安全に運転が継続されます。しかしながら、外的要因や地熱発電固有のスケール付着等、発電所の運転グループによる通常の管理では抑止できない状態となるリスクは免れることができず、そのような事態が発生した場合でも発電所を構成する機器を損傷しないような保護システムが設置されます。

例えば送電線事故などの外因により発電機が送電系統から切り離された場合、一般的には発電所内のポンプなどの設備だけの負荷まで急減させて運転を継続し(所内単独運転)、外部の復旧とともに直ちに送電開始できるよう待機できる設計が採用されます。この場合、タービンは急激に負荷が減少するため回転数が急上昇しないようにタービン加減弁を急速に絞るように設計されています。このような事態の時に加減弁にスケールが付着していて急激な閉操作が妨げられるとタービンの回転数は異常上昇して、最悪の事態ではタービンおよび発電機が損壊しかねません。このような重大事故に至らないように保護ロジックが計画され、緊急時には適切な動作をするように建設されます。

図1にタービン保護ロジックの例を示します。ロジックは、保護回路だけでなく発電所を構成する機械の操作にも使われます。例えば、温水ポンプが不具合で停止した場合に出口弁を自動で閉鎖するなど、発電所の構成機器がいろいろな状況に応じて適切に動作するように設計されます。最近では発電所の総合的な監視に計算機システムが採用されますが、構成機器の操作ロジックは計算機システムの中でプログラムにより構成されることが多くなりました。

図1 タービン保護ロジックの例
図1 タービン保護ロジックの例

しかしながら、タービン保護などの重要ロジックには現在でも継電器(リレー)を使用したロジックが採用されることが多いです。計算機は多重化されて信頼性を高めているが、MPU の故障などの重大事に監視装置もロジックも全ての機能を失うため、重要な保護には継電器を利用した計算機とは独立した保護システムを持たせる目的です。

保護システムには圧力や回転数などの状態量を知るための計測器が使用されますが、計測器や信号線の断線などの不慮の事態に備えて多重化することが一般的になってきました。

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2021):「令和2年度 地熱開発技術者研修会テキスト」
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