地熱発電所におけるスケール問題には、図1 に示すように、シリカスケール、カルシウム系スケール、硫化物スケール、ケイ酸塩スケールなどがありますが、多くの地熱発電所で問題となっているものとして、主に次の2 つが挙げられます。
このようなスケールへの対策として様々な技術が適用されており、それらの技術は「スケール付着防止技術」と「スケール除去技術」に大別されます。ここでは、「スケール付着防止技術」について紹介します。
1.シリカスケール
地熱熱水は地下の高温高圧下でシリカ鉱物と溶解平衡にあるため、高濃度のシリカを含んでいます。この熱水から蒸気を分離することによりシリカの濃縮及び温度低下が生じ、シリカが過飽和となるとスケールとして析出します。このシリカスケールの付着防止技術を図2 に示します。また、シリカスケール付着防止技術の概要を表1 に示します。
2 炭酸カルシウムスケール
生産井における炭酸カルシウムスケールの生成機構は、以下のように考えられています。坑内で熱水がフラッシュすると、以下の化学反応が右へ進み、二酸化炭素(CO2)ガスの逸散により炭酸カルシウムがスケールとして析出します。
2HCO3- ⇔ CO32- + CO2↑ + H2O
Ca2+ + CO32- → CaCO3↓
この炭酸カルシウム付着防止法としては、主に、ポリアクリル酸系インヒビターの生産井坑内への注入が一般的です。国内では、柳津西山発電所、森発電所、滝上発電所の3地点で生産井に炭酸塩スケールが析出することが報告されています。いずれも対策実施前には早ければ数ヶ月で噴出量が減少し浚渫などの対策が必要になっていましたが、インヒビターの添加後には安定した生産が可能となっており、効果があると考えられます。
【ご参考】