新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-

地熱発電開発における環境アセスメント

環境アセスメントは、自然環境に大きな影響を及ぼす恐れがある事業の場合、それらの影響の可能性について、開発事業者が予め調査・予測・評価を行い、その結果を公表して公衆や地方公共団体等から意見を聴き、環境保全の観点からより良い事業計画に改善していく制度です。地熱発電の場合、出力1万kW以上の地熱発電設備を建設・増設する際に環境アセスメントの実施が必須であることが環境影響評価法により定められており、出力7,500〜1万kWの場合はその実施有無が個別に判断されます。更に条例によっては5,000kW以上で実施する等、開発地域によって対象規模が異なるため留意が必要です。

環境アセスメントの手続きには通常4年程度を要していましたが、これまでNEDO事業ではその期間半減を目指した実証事業を実施し、「環境アセスメント迅速化手法のガイド–前倒環境調査の方法論を中心に-」を公表しました(図1)。このガイドでは、手続きの迅速化において調査等の手戻りリスクをどこまで許容するかの判断材料を提供し、開発事業者が環境アセスメントの質を落とすことなく手続期間の半減に資するものとなっています。

図1 環境アセスメント手続き期間半減工程のイメージ
図1 環境アセスメント手続き期間半減工程のイメージ

近年、環境アセスメント対象となった新規の大規模地熱事業として、秋田県湯沢市の山葵沢地熱発電所があります。ここは地熱発電所として環境影響評価法の施行後初めての対象事業です。今後の地熱発電の環境アセスメントを実施していく上で有用な知見となることが期待される一方、本事業による環境影響には未解明点もあることから、環境大臣より以下の取り組みを行う旨の意見があり、事業者による適切な対応により許認可されました。

  • 環境監視を適切に実施し、必要に応じて、追加的な環境保全措置を講じること。
  • 追加的な環境保全措置の具体化に当たっては、客観的かつ科学的に検討するととも に、その検討結果等を公開し、透明性及び客観性を確保すること。
  • 追加的な環境保全措置を講じたときは、実施結果及び措置の効果等をとりまとめ、公表すること。

【引用】

  • ・新エネルギー財団(2021):「令和3年度 地熱開発技術者研修会テキスト」

【参考文献】

ページトップへ