1-2ケーシングセメンチング
ケーシングセメンチングの高温度対策は、セメンチング方式により異なるが、地熱井セメントの使用、セントラライザーによるセメントスラリーの置換効率向上、ケーシングとケーシング間隙でのウォータポケットによる圧潰防止は全てのセメンチングの共通対策事項である。
マルチプルステージセメンチングでは、クロージングプラグを切削しやすくするために、プラグ上部にセメントを打設することがあるが、フロートカラーからクロージングプラグ下部までの泥水温度が上昇するとこの区間に温度膨張圧が発生する。この圧力によりセメント切削時にストリングスが突き上げられ、重大な事故が発生することがある。水の温度による圧力上昇は6.33ksc/℃で、温度差を80℃とするとケーシング内圧力は506 kg/cm2となる。図2にストリングス打上げ模式図を示す。
1-3地熱流体の暴噴
地熱流体の暴噴は、高温度だけでなく地熱流体に含まれるガスに起因することにより発生する。ガスが坑内に流入すると、坑内の流体柱圧力が減少し暴噴に至る。ガスのみであれば、重泥水により抑圧することができるが、高温度が主原因である場合は冷却も必要となる。逸泥等により坑内水位が降下した状態で温度上昇すると、水の沸騰曲線を超える温度と圧力の区間が発生し、暴噴することがある。図3に暴噴事例を示す。
蒸気による暴噴の抑圧は、石油およびガス掘削における重泥水によるキックコントロール対策と異なる工法でおこなう必要がある。これは、BOPを密閉しストリング内から重泥水を送入し、チョークバルブから排出させるキックコントロール対策を実施すると、高温高圧の流体を大気化に排出させることになり、排出口で急激に蒸発する。この蒸発により周辺の設備や人員に重大な影響を与える恐れがある。地熱井では、ドリルストリング内およびキルラインより坑内容量分の重泥水を送入し、坑内を重泥水で満たしたのちに坑口を開放し循環をおこなう対策が必要である。図4に坑内温度の例を示す。
【参考文献】