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地熱掘削技術(その4)

3 逸泥対策(その1)

逸泥は、掘削流体やセメントスラリーが地層中に逸送してしまうことで、地熱井の掘削では数多く発生し、泥水を無駄にするだけでなく、掘削工程が延長しコスト増加の原因にもなる。逸泥は、その規模により少量逸泥、中規模逸泥、全量逸泥に分けられるが、逸泥層の種類や逸泥層の自然水位、送泥中の水位等を把握したうえで、対策を検討すべきである。特に、全量逸泥は泥水のリターンが無い全ての逸泥を示すが、自然水位の深さや循環中の水位によって、その規模は大きく異なり対策方法も異なる。

既存の発電所のある地域の生産・還元に関係する逸泥層には、人為的な地熱流体の流れがあることがある。このような逸泥層を止める作業は、困難で長期間を要することが多い。このような逸泥層が予測される場合は、その個所を回避する坑跡計画を立案することも重要である。

(1)逸泥防止剤よる対策
 逸泥防止剤には、綿の実・クルミの殻・トウモロコシの茎などの植物性の物、蛭石・雲母片等の岩石粉砕物、粒状ゴム・フィルム屑等のポリマー系の物がある。逸泥防止剤よる対策は、泥水全体に混入する場合と逸泥防止剤を混入した泥水を逸泥個所にスポットする方法がある。また、防止剤送入後に加圧スクイズすることもある。セメントによる対策時に、水を吸収しない防止剤をセメントに混入して使用することもある。
 逸泥防止剤は、想定した逸泥層の形状や坑内温度に合わせて数種類の逸泥防止剤を混ぜ合わせて使用する。逸泥防止剤は、水位降下が大きい逸泥層には圧縮により変形しない逸泥防止剤、高温度下では温度で変質しない蛭石・雲母片等の岩石粉砕物を用いることが多い。
 小径のビットノズルやダウンホールモータ等の狭い通路があるダウンホールツールを使用中に、逸泥防止剤を使用する場合は、そのツールを逸泥防止剤が通過できるか検討する必要がある。

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2023):「令和4年度 地熱開発技術者研修会テキスト」
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