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地熱掘削技術(その5)

3 逸泥対策(その2)

図7 養生温度と圧縮強度(宇部三菱セメントカタログ)
図7 養生温度と圧縮強度
(宇部三菱セメントカタログ)

(2)セメントよる対策
 セメントよる対策は、逸泥量が多い場合や逸泥の再発を防ぐために行われ、普通セメント(OPC)または地熱セメント(GWC)を用いる。また、スポットしたセメントスラリーを加圧スクイズすることもある。逸泥の規模や坑内状況等によってセメント添加剤の種類を決め、適切なセメントスラリーを作液し、逸泥層へ送入することが重要である。

セメントは、基本的に坑内の温度が100℃以下の場合は普通セメントを、100℃以上の場合は地熱セメントを選択する。図7に各種セメントの養生温度と圧縮強度を示す。

セメンチング作業に合わせたシックニングタイムを得るため、坑内温度を予測し、速硬剤、遅硬剤、分散剤を選択してセメントスラリーの組成を決定する。加圧スクイズをおこなう場合や薄い逸泥層の対策では、セメント添加材として脱水減少剤を使用すると効果がある。セメント添加剤に逸泥防止剤を使用する場合は、セメント性状やセメンチングポンプの運転に支障が無いものを選択する。

セメント硬化後の圧縮強度が地層の強度より高いと、セメント浚い中に孔替わりする危険性がある。セメントスラリー放置後のドリルパイプ揚管は、セメントによる抑留を防止するためセメントコラム予測深度より十分余裕を持った深度までおこなう。

(3)ケーシングセメントスラリーの逸泥
 ケーシングセメンチング中にセメントスラリーが地層に逸送することで、この逸送が起きるとスラリーは回帰または予定深度まで立ち上がらないことが多い。また、一度回帰したスラリーが、逸送することで降下することもある。

この逸泥を防ぐには、掘削中の逸泥対策を適切におこなうことや、低比重セメントの使用、セメンチング中のケーシングの管動により発生するサージ圧減少、ステージセメンチング中のポート開放圧を最小限にするなどの対策が必要である。低比重泥水の坑井では、セメンチング開始当初にセメントスラリーと泥水の比重差でスラリーとプラグが落下してしまい、送ったスラリー量より多くの泥水がリターンすることがある。その後、押し泥水送入中に一時的に泥水のリターンがなくなる現象があるが、これは逸泥ではない。

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2023):「令和4年度 地熱開発技術者研修会テキスト」
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