新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-

地熱掘削技術(その7)

4 坑内トラブルと対策(その2)

(2) ストリングの切断と採揚
ストリングの切断は、オーバートルク、金属疲労、硫化物応力腐食割れ、ウォッシュアウト等によりに発生する。オーバートルクによる切断は、ストリングにその性能以上のロータリートルクがかかると、管体やネジ部が破損することで発生する。金属疲労による切断は、掘削作業により繰り返し圧縮や曲げ応力を受けたストリングが疲労することで発生する。図10にストリング切断状況を示す。

図10 ストリング切断状況
図10 ストリング切断状況

硫化物応力腐食割れによる切断は、坑内に流入した硫化水素により、短時間でドリルパイプに水素脆性による割れが発生する現象で、グレードの高いドリルパイプで発生しやすい。硫化物応力腐食割れは、常温域で影響が最も大きく、温度が上昇するとこの影響は減少する。使用温度が57℃を超えると硫化物応力腐食割れに敏感な高強度材も使用に耐える。ただし、材料を高温の坑内から通常温度に移すと硫化物応力腐食割れが発生することがある。このため、高強度のドリルパイプを使用した坑井の浅部において発生しやすくなる。

硫化物応力腐食割れによる切断が発生した場合は、破損個所だけでなく、周辺に小さな亀裂が発生していることが多くあるので、破損個所周辺のドリルパイプは入れ替えることが望ましい。図11に硫化物応力腐食割れと思われる亀裂を示す。

図11硫化物応力腐食割れと思われる亀裂
図11 硫化物応力腐食割れと思われる亀裂

ウォッシュアウトによる切断は、管体に発生したピンホール、ジョイント部の締付け不足やカジリによる間隙から泥水が漏出し、この泥水の流れにより管体やネジ部が摩耗することで発生する。

採揚作業は、揚管したストリング下部の破損状況から遺留物上部の状況を想定するか、インプレッションブロックを用いて遺留物頭部形状を把握してから計画する。採揚には基本的にオーバーショットを使用するが、遺留物頭部が変形している場合はオーバーショットのミルコントロールを使用するか、ドレッシングミルで修正してからオーバーショットを使用する。

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2023):「令和4年度 地熱開発技術者研修会テキスト」
ページトップへ