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脱炭素先行地域(第1回)選定について

環境省は、第1回目の「脱炭素先行地域」募集を令和4年1月25日から2月21日までの期間で実施したところ、共同提案を含め日本全国の102の地方公共団体から79件の計画提案を提出があり、脱炭素先行地域評価委員会の評価を踏まえ、26件の計画提案を「脱炭素先行地域(第1回)」として選定したと発表した。国が決定した「地域脱炭素ロードマップ」においては、2025 年度までに少なくとも 100 カ所の「脱炭素先行地域」を創出し、2030 年度までに実行すること、とされている。

「脱炭素先行地域」とは、2030年度までに民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO₂排出実質ゼロを実現するとともに、運輸部門や熱利用等も含めてそのほかの温室効果ガス排出削減についても、わが国全体の2030年度目標と整合する削減を地域特性に応じて実現する地域のこと。

以下の26地域が「脱炭素先行地域」に選定されたが、その中には、地域と共生した再エネ導入において先駆的な活動として有名な案件が数多く含まれている。

【脱炭素先行地域(第1回)】※( )内は共同提案者、「 」内は「提案件名」

  • ①北海道 石狩市:「再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン」
  • ②北海道 上士幌町:「未来へつなぐ持続可能なまちづくり-ゼロカーボン上士幌の実現とスマートタウン構築を目指して-」
  • ③北海道 鹿追町:「多様なエネルギーの循環とレジリエンス強化、環境価値の向上による地方創生モデル「MIRAI COUNTRY」の提唱」
  • ④宮城県 東松島市(一般社団法人東松島みらいとし機構):「震災復興からつなぐ未来都市ー人・エネルギー・地域でつくる未来の環ー」
  • ⑤秋田県 秋田県(秋田市):「流域下水道を核に資源と資産活用で実現する秋田の再エネ地域マイクログリッド」
  • ⑥秋田県 大潟村:「自然エネルギー100%の村づくりへの挑戦!~第1章電気編~」
  • ⑦埼玉県 さいたま市(埼玉大学、芝浦工業大学、東京電力パワーグリッド株式会社埼玉総支社):「さいたま発の公民学によるグリーン共創モデル」
  • ⑧神奈川県 横浜市(一般社団法人横浜みなとみらい21):「みなとみらい21地区における公民連携で挑戦する大都市脱炭素化モデル」
  • ⑨神奈川県 川崎市(脱炭素アクションみぞのくち推進会議、アマゾンジャパン合同会社):「川崎市の交通要衝「みぞのくち」からはじめるCO2最大排出都市の脱炭素アクション」
  • ⑩新潟県 佐渡市(新潟県):「離島地域におけるEMSを活用した自立分散・再生可能エネルギーシステム導入による持続可能な地域循環共生圏の構築」
  • ⑪長野県 松本市(大野川区、信州大学):「のりくら高原「ゼロカーボンパーク」の具現化」
  • ⑫静岡県 静岡市:「脱炭素を通じて新たな価値と賑わいを生む「みなとまちしみず」からはじまるリノベーション」
  • ⑬愛知県 名古屋市(東邦ガス株式会社):「再開発地区で実現する脱炭素コンパクトシティモデル」
  • ⑭滋賀県 米原市(滋賀県、ヤンマーホールディングス株式会社):「農山村の脱炭素化と地域活性~米原市「ECO VILLAGE構想」~」
  • ⑮大阪府 堺市:「堺エネルギー地産地消プロジェクト」
  • ⑯兵庫県 姫路市(関西電力株式会社):「姫路城ゼロカーボンキャッスル構想~世界遺産・国宝「姫路」から始まる脱炭素ドミノ~」
  • ⑰兵庫県 尼崎市(阪神電気鉄道株式会社):「阪神大物地域ゼロカーボンベースボールパーク整備計画~地域課題解決型!官民連携事業~」
  • ⑱兵庫県 淡路市(株式会社ほくだん、シン・エナジー株式会社):「市におけるコンパクトシティ×里山ハイブリッド脱炭素化モデル事業」
  • ⑲鳥取県 米子市(境港市、ローカルエナジー株式会社、株式会社山陰合同銀行):「地域課題解決を目指した非FIT再エネの地産地消と自治体が連携したCO2排出管理によるゼロカーボンシティの早期実現」
  • ⑳島根県 邑南町(おおなんきらりエネルギー株式会社):「再生可能エネルギーで輝く「おおなん成長戦略」」
  • ㉑岡山県 真庭市:「森とくらしで循環ゼロカーボンシティ真庭」
  • ㉒岡山県 西粟倉村(株式会社中国銀行、株式会社エックス都市研究所、テクノ矢崎株式会社):「2050“生きるを楽しむ”むらまるごと脱炭素先行地域づくり事業」
  • ㉓高知県 梼原町:「脱炭素は土佐の山間より~ゆすはら脱炭素の道~」
  • ㉔福岡県 北九州市(直方市、行橋市、豊前市、中間市、宮若市、芦屋町、水巻町、岡垣町、遠賀町、小竹町、鞍手町、香春町、苅田町、みやこ町、吉富町、上毛町、築上町):「公共施設群等における再エネ最大導入・最適運用モデルと横展開による地域産業の競争力強化」
  • ㉕熊本県 球磨村(株式会社球磨村森電力、球磨村森林組合):「脱炭素×創造的復興」によるゼロカーボンビレッジ創出事業
  • ㉖鹿児島県 知名町(和泊町、リコージャパン、一般社団法人サステナブル経営推進機構):「ゼロカーボンアイランドおきのえらぶ」

また、今回の脱炭素先行地域を決定するにあたり、評価のポイントとして挙げられているのが以下の通り

【評価ポイント】

  • 1)範囲の広がり・事業の大きさ

    脱炭素先行地域は、日本全体の「脱炭素ドミノ」の起点となり得るモデルであるため、当該対象範囲で取り組む意義や必要性を明確にするとともに、対象範囲を需要家の合意が得られたエリアや施設のみとするなど限定的に設定するのではなく、一定の広がりや規模を確保することが必要。

  • 2)関係者と連携した実施体制

    民生部門の電力消費に伴うCO₂ 排出の実質ゼロを達成するためには、それを確実に実施する体制を構築することが必要不可欠であり、提案の時点ではそれがある程度明確になっていることが重要。

  • 3)先進性・モデル性

    単なる再エネ設備の導入にとどまることなく、地域経済の循環や地域課題の解決、住民の暮らしの質の向上につながることを意識した先進的な取り組みが評価された。地域脱炭素によって「環境問題と社会経済問題の同時解決」を目指す方向性が重要。

脱炭素先行地域に選ばれた地域には、環境省が22年度予算に新規に200億円計上した「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を5年程度優先的に配分し、太陽光や風力といった再エネ発電設備の整備などを後押しする。同省は25年度にかけ、年2回のペースで先行地域の募集と選定が予定されている。

今後、自治体が地域の企業等と連携して、面的に再エネを拡大する取り組みが益々増えることを期待したい。

【参考資料】

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