再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)に基づく太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度が2022年7月から開始された。
2012年7月から始まった再エネ特措法に基づく固定価格買取制度により、我が国の再生可能エネルギーの導入は太陽光を中心に大きく拡大したが、太陽光発電事業は参入障壁が低く様々な事業者が参入した上、制度が始まった初期のころには電気事業法の規制を避けるためあえて発電設備を50KW以下に分割して投資家に販売するような開発が行われたり(現在はこの手法は禁止されている)、また投資費用の早期回収のため転売が行われたりと、制度開始当初の買取価格が高額であったこともあって乱開発と言ってもよいような状況であった。そのため、開発が行われた地元の自治体や住民からは「初めに説明に来た事業者は、今は無関係になっていて、今の事業者は一度も会ったことがない」と言われ、「このままでは買取期間が終了した後は、発電設備が放置・不法投棄されるのではないか」といった懸念が出てきたところである。
他方、資源エネルギー庁は、太陽光パネルについては鉛、セレン等の有害物質を含むことから、利用後の設備の廃棄について適切な対処がなされるよう、調達価格の算定にあたって廃棄費用もきちんと計上して支払っているという立場である。そのため、この地域の懸念を見過ごしにすることはできず、2018年4月には、FIT認定の際の事業計画策定ガイドラインを改正し、廃棄費用の積み立てを遵守事項とするとともに、事業計画策定時に処分費用やその積立額を記載することを求め、また同年7月からは定期報告において積み立ての進捗状況の報告を義務化した。しかし、報告することは義務であっても、実際にどの時点でいくら積むかは事業者の判断であったことから、8割以上の事業者は「積み立てしていない」ことがわかり、廃棄費用の確実な積み立てを担保するための制度を創設すべく2020年6月に再エネ特措法の改正が行われ、その後準備期間を経て2022年4月に改正法が施行された。
施行された制度の概要は次のとおりである。
太陽光発電設備の廃棄処理については、当該設備を用いて発電事業を行った発電事業者が責任をもって行うべきことは、本制度以前の問題として、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)等で決められていることであるが、地元に縁もゆかりもなく、どこの誰ともわからない者が後始末まできちんとしてくれるかという地域の心配はよくわかるところである。この制度では、市町村等が廃棄物処理の代執行者として処理を行った場合にも、かかった費用の取り戻しを請求することを認めていることから、地域の安心に大いに貢献できるものと期待するところである。
【参考資料】