卸電力市場の内、取引量が最も大きい「前日市場(スポット市場)」について「日本卸電力取引所(JEPX)取引ガイド2019.1.22更新」に基づきその概要と最近の取引状況や主な課題について紹介する。
シングルプライスオークション方式【注記】とする。すなわち、入札締切後、取引所はすべての入札を「売り」と「買い」に分けて合成し、売りカーブと買いカーブの交点を約定価格・約定量とする。
【注記】シングルプライスオークション方式とは、事前に単位時間後毎に高い価格から並べた買い注文と低い側から並べた売り注文の交点で取引価格と量が決定される方式。原則、約定価格より高い買い入札及び安い売り入札が約定することとなる。
【最近の取引状況と主な課題】
従来は、全販売電力量のほとんどを旧一般電気事業者が保有しており内部取引や相対取引が主体であり、競争上の障害となっていた。しかし、最近では、旧一般電気事業者の自主的な取組みとして、各社の販売電力量の約20%~30%程度を限界費用ベースで取引所に玉出ししている。このような取り組みもあり、JEPXでの取引量も徐々に増加している。2020年6月時点(2020.4~6)では、わが国の販売電力量(1825億kWh)に占める卸電力のシェアは、約38%(約定量683億kWh、約定価格4.8円/kWh(スポット市場))であり、新電力のシェアも17%(特高、高圧)19%(低圧)となっている。しかし、これは旧一般電気事業者等の自主的な電源供出(グロス・ビディング(注記))によるところが大きく、今後は義務化などの措置により市場規模を拡大し経済性の向上を図ることが必要と考える。
【注記】グロス・ビディングとは、従来、余剰電力を中心に行われていた取引所取引(ネット・ビディング)に加え、旧一般電気事業者の自社供給分を含めて取引所を介して売買する取り組み。