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電力安定供給と脱炭素化を実現する夢の「宇宙太陽光発電」

「宇宙太陽光発電」とは、宇宙空間に設置した太陽光パネルで発電を行い、その電気を地上に伝送して電力として利用するシステムのこと。地上の太陽光発電は、夜間は発電できず、天気によって発電量が左右されるが、宇宙太陽光発電なら、昼夜を問わず発電でき、安定的に電力供給ができる。太陽光発電の弱点である稼動率の低さを、宇宙で発電することで解決できるのが最大のメリット。

夢のような発電方式に思えるが、関西電力グループのK4 Venturesと資本提携しているSpace Power Technologiesが、離れていてもマイクロ波をキャッチして電気に換え、充電される無線給電システムの開発を行っている。現在、総務省でも電波法改正を含めた議論が進んでおり、制度が整えば、宇宙太陽光発電実用化に向けた一歩が前進するかもしれない。

宇宙太陽光発電から地球への送電は、電力をマイクロ波に変換して送電する。マイクロ波とは、周波数300MHzから30GHz程度の電磁波で、電子レンジや携帯電話、飛行機の運航や気象観測レーダーなどに利用されている。マイクロ波で地上に送ると、雨が降っていてもほとんどエネルギーが減衰しないまま、静止衛星軌道3万6000kmから0.02秒ほどで地上に届く。

コスト的にも、宇宙太陽光発電は設備を打ち上げるロケット代がかかるが、それを補う設備稼動率の高さがある。試算では日本では地上の太陽光発電稼動率は14~15%だが、宇宙での稼動率は90%以上。8〜9円/kWhで売電し30年運用すればビジネスとして十分成立する。

海外では、アメリカと中国で研究が進んでいる。アメリカでは空軍研究所とカリフォルニア工科大学にそれぞれ約100億円ともいわれる予算がついており、本腰を入れて取り組んでいる。

中国も重慶に宇宙発電研究所をつくり、「2030年にメガワット級の試験的な宇宙太陽光発電所の建設を開始し、2050年までにギガワット級商業宇宙太陽光発電所を建設する技術力を培う」という目標を発表しており、研究を加速させている。

日本では、国の宇宙基本計画が示す商用化の目標は2050年、政府は2022年度から宇宙空間に太陽光パネルを展開する実証実験を開始する予定。また、2025年度には別の衛星実験でマイクロ波送電の実証にも取り組む予定だ。

研究の第一人者の京都大学生存圏研究所 篠原真毅教授は、SFっぽいので、夢のような話と思われがちだが、今の技術で十分可能。ただ、部品輸送等のイニシャルコストを下げるため、部品を減らす、安いロケットを開発するなど解決しなければならない課題はある。ビジネスの場で研究をブラッシュアップし、宇宙からの電力供給実現に繋げたい、と語る。

国土の狭い日本においては、太陽光発電施設の設置場所の問題が各地で起こっている。まだまだ先の話になると思うが、設置場所の心配がなく、安定して電力を供給できる「宇宙太陽光発電」の今後の研究に期待したい。

※参考資料

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