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電気事業法の保安規制の見直しについて

令和4年6月15日に高圧ガス保安法等の一部を改正する法律が成立し、その一部として電気事業法の改正が行われた。今回の改正の最大のポイントは、テクノロジーの活用を通じて安全性と効率性を両立させるスマート保安を促進するための「認定高度保安実施設置者に係る認定制度」(高圧ガス保安法、ガス事業及び電気事業法の3法共通の改正事項)の導入であるが、電気事業法ではそれ以外にも太陽光発電と風力発電に関する保安規制の見直しが行われたので、その点について解説する。

  • (1)小規模な再エネ発電設備に係る保安規制の見直し
     従来、電気事業法では、太陽光発電設備については50KW以上のものを事業用電気工作物、50KW未満のものを一般用電気工作物とし、一般用電気工作物についてはほとんど強い規制をしてこなかったが、今回、10KW以上50KW未満のものを新たに「小規模事業用電気工作物」と位置づけ、次のような規制を導入することとした。
    • ①電気工作物を技術基準に適合するように維持すること
    • ②設備の使用前に安全確認を行うこと
    • ③設備の基礎情報(設備所有者、設備の種類・所在地、保安管理担当者等)を国に届け出ること
     50KW以上の事業用電気工作物について義務付けられている電気主任技術者の選任、保安規程の届出等の規制に比べれば簡易なものではあるが、規制の強化であることは事実であり、背景について若干の説明が必要になる。
     2012年7月に開始されたFIT制度により再生可能エネルギーの導入は大いに促進されたが、特に太陽光については当初の買取価格の設定が高額であったことから、乱開発ともいえるような状況が生まれ、その中では常識的に考えれば50KW以上の事業用電気工作物となるような案件について、電気事業法の規制を潜り抜け素早く売電を開始するためにあえて小口に分割して設置し別々に低圧の系統に接続するということが行われた。結果的に我が国では買取期間20年の事業用の太陽光発電としてFIT認定を受けた案件の95パーセントが10KW以上50KW未満のものとなっており、世界的に見て大変に特異な導入形態となっている。資源エネルギー庁のFIT制度担当部署は、このことによる制度運営コストの不必要な増加や一般送配電事業者の管理コストの増加とそれらに伴う国民負担の増加等を抑えるため、2014年以降こうした分割案件を禁止すべくFIT制度の中で累次対策を強化し、さらに2020年度からは10KW以上50KW未満のものについては、認定に当たって地域活用要件(30%以上の自家消費等)を付加したことからFIT制度側ではこの問題は落ち着いてきたところであるが、他方、FIT制度を利用しない太陽光発電設備において近時こうした分割案件が増えてきている状況であり、省エネ法の改正によって需要家側にも再生可能エネルギーの利用の義務付け等が始まろうとする中で、電気事業法本体側でも対策が必要となったところ。そのため2022年4月に電気事業法施行規則を改正し、特段の理由がないにも関わらず意図的に柵や塀によって発電設備を分割し別々に系統と接続することを認めないこととしたところであるが、FIT認定手続き等によりすべての設備が把握されているFIT制度と異なり電気事業法では従来50KW未満の設備は正確に把握されていなかったため、規制の実効性を高めるべく今回法改正を行い、10KW以上50KW未満のものについて基礎情報の届け出等の制度を整えることとしたものである。
     風力発電設備についても従来一般用電気工作物とされていた20KW未満のものがすべて「小規模事業用電気工作物」とされ、同様の規制が行われることとされた。
  • (2)風力発電設備に係る登録適合性確認機関制度
     風力発電設備についての技術基準への適合性確認の審査の迅速化を図るため、風力発電に特有の設備(ナセル、支持物、基礎等)については、専門的知見を有する事業者を「登録適合性確認機関」と位置づけ、当該機関が技術基準への適合性について証明した場合には、工事計画の届出に係る国の手続きを大幅に簡略化し、迅速な工事開始に結び付けることとされた。
     風力発電の工事計画の届出の受理手続きについては、当財団の新エネルギー産業会議風力委員会でも令和2年3月に関連する提言を取りまとめており、今回の法改正はそれに対応していただいたものとして評価し、大いに期待しているところである。

なお、上記(1)、(2)に係る法改正は、詳細部分についての詰めを行ったうえで、2023年3月までに施行される。それに合わせて実施体制の整備についても万全の準備を整えられ、制度が有効に機能するようにすることが重要である。

【参考資料】

  • ・令和4年7月29日 産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会電力安全小委員会資料「電気事業法の改正について(御報告)」
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