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洋上風力について(その1)―主力電源化の切り札 洋上風力テイクオフ―

洋上風力の案件形成から事業者公募までの流れとしては、都道府県からの情報提供等に基づき「一定の準備段階に進んでいる区域」「有望な区域」を毎年度整理し、協議会の審議結果を踏まえて「促進区域」に指定し、事業者公募が実施される。2019年4月に再エネ海域利用法が施行されて以来、2022.1現在までに「促進区域」5地域、「有望な区域」7地域、「一定の準備段階に進んでいる区域」10地域の合計22地域が採択されている。

促進区域に昇級した5区域の内、「長崎県五島市沖(浮体式)」は既に事業者選定が終了(2021.6.11公表)されている。残る4区域の内、「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖」、「千葉県銚子市沖」の3区域の事業者が選定され(2021.12.24公表)、「秋田県八峰町・能代市沖」が公募中となっている。今回事業者が選定された3区域については、三菱商事グループが驚異の低価格応札でいずれの区域とも採択され、発電出力合計約170万kWが形成されたこととなる。主力電源化の切り札とされている洋上風力発電がテイクオフしたといえる。

洋上風力の産業競争力強化に向けた洋上風力産業ビジョン(R2.12.15)では基本戦略がまとめられており、①2030年までに1000万kWの案件形成、②国内調達比率2040年までに60%とする、③着床式の発電コスト8~9円/kWh とする、との目標が公表されている。

特に洋上風力産業ビジョンでの導入目標に関しては、2020年度より年間100万kW程度の案件形成を行い10年継続。現状の手続きやリードタイム(8年程度)を考慮すると2030年100万kW程度の導入(努力継続ケース)としている。これに対して、国のエネルギー需給見通しをベースとした目標(野心的水準)としては、2030年570万kWを目標としている。従って、現状と同じリードタイムとすると毎年 500~600万kW程度の案件形成が必要とされものであり、相当厳しい目標と言える。

とりあえず、今回の事業者選定で洋上風力発電がテイクオフしたといえるが、野心的水準達成のためには、大幅な促進区域拡大、案件形成の加速化(日本版セントラル方式導入検討を含む)、出力規模の拡大やリードタイムの短縮化など多くの課題解決が必要とされる。

再エネ海域利用法の施行等の状況
(新エネルギー財団風力発電講演会2021.11.26 資源エネルギー庁講演資料より抜粋)
再エネ海域利用法の施行等の状況
(下線は2021年度に追加した区域)
洋上風力発電事業者の選定結果(発電出力合計:170.52万kW)
(経済産業省 ニュースリリース2021.12.24より)
洋上風力発電事業者の選定結果
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