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洋上風力について(その8)
―ラウンド2海域、入札価格に注目―

洋上風力入札のラウンド1は、三菱商事グループが3区域を総取りする結果(2021.12.24公表)となった。これを受けて経産省資源エネルギー庁と国土交通省港湾局との合同会議では、今後の事業者選定の評価に関する修正案が示され、パブリックコメントを踏まえて「ラウンド2海域【注記】に係わる公募占用指針(案)」(2022.10.28)として示された。その後、調達価格等算定委員会の審議をえて、まもなく公募占用指針による公募が開始されようとしている。ここでは、上記公募占用指針に関して、ラウンド1から見直された主なポイントについて整理したので紹介する。
【注記】ラウンド2海域とは、「①秋田県八峰町及び能代市沖」、「②秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」、「③新潟県村上市及び胎内市沖」「④長崎県西海市江島沖」の4海域。

【全体】

国民負担の抑制と事業の確実な実施の両立が大原則であることから、従来通り「供給価格」と「事業実現性評価」の配点は引き続き1:1で評価するとしている。

【供給価格等について】

  • (1)供給価格上限額の設定
     調達価格等算定委員会(2022.11.4開催)からラウンド2海域での供給価格上限額を19円/kWh(①、②、③海域)及び29円/kWh(④海域)とする案が示され公募占用指針に反映している。
    ④海域の長崎県西海市江島沖が高くなっているのは、地盤の特性により特殊な基礎形式(ジャケット式)を採用していることから価格が上がることを配慮している。
     ラウンド1では、供給価格上限額は29円/kWhで設定していたが、選定事業者(三菱商事グループ)からの3海域の供給価格は、11.99、13.26、16.49円/kWhであり、驚愕の低価格応札であった。今回提示された供給価格上限額19円/kWhは、ラウンド1での入札価格と比較すると7円~2.5円高い水準となっており、今回の公募結果として入札の供給価格が上限に張り付くのか、或いはさらに低価格となるのか注目されるところである。
    再エネ海域利用法に基づく公募占用指針に関する供給価格上限額についての委員長案
    (調達価格等算定委員会(2022.11.4開催)資料より抜粋)
  • (2)FIP制度の適用
     ラウンド2海域すべてについてFIP制度を適用するとしており、FIPの基準価格は選定事業者が提出した供給価格としている。つまり、原理的には、市場価格より高い価格で入札した場合は市場価格との差がプレミアとして発生(国民負担あり)、一方、市場価格より低い価格で入札した場合、プレミアは生じない(国民負担なし)こととなる。
  • (3)供給価格の評価
     各公募参加者の供給価格のうち、最も低い供給価格の場合は満点(120点)とする。
     また、これまでの市場価格の推移を参考として、供給価格が3円/kWh以下(ゼロプレミアム水準)の場合、一律満点(120点)とするとしている。
    FIP制度における入札価格の考え方
    (調達価格等算定委員会(2022.11.4開催)資料より抜粋)

【迅速性とペナルティ】

  • (1)迅速性について
     迅速性については、各基地港湾の利用可能期間等を踏まえ想定される最速の運転開始時期を考慮し運転開始時期を区域ごとに予め設定しておく。その上で、予め設定された最速の運転開始時期を基準として段階的に評価する。
  • (2)ペナルティについて
     調達価格等算定委員会(2022.11.4開催)から、運転開始遅延に関する罰則が示された。具体的には、保証金の没収であり、「迅速性の評価点が下がってしまう日までに海洋再生可能エネルギー発電設備が運転開始をしなかった場合、全額没収」としている。
     ちなみに、50万kWクラスの洋上風力の場合、没収規模は65億円程度となる。

【複数区域同時公募時の落札制限】

基本的には、国内の洋上風力産業が黎明期にあることから事業者への参入機会を与える観点から落札数に制限を設けることとし、同時に公募する区域数や出力規模を踏まえて公募ごとに落札制限の適用有無等を判断するとしている。今回の場合は、公募参加者一者あたりの落札制限として系統容量合計が1GWの基準を設けるとしており、1GW以上となった場合、落札上限に達したと判断し、残る応札海域の応札提案は無効とし、他の公募参加者に一定のルールで割り当てるものとしている。

なお、2024年度以降は、原則、落札制限は実施しないとしている。

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