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洋上風力について(その12)
―EEZへの設置に向け改正法案を閣議決定―

政府は、日本の排他的経済水域(EEZ)内に洋上風力発電設備の設置を可能にする法律の改正案を閣議決定(2024.3.12)し、今国会への改正案の提出、成立を目指す。ここでは、改正案の概要について紹介する。

(詳細については、経済産業省ホームページ ニュースリリース 2024.3.12を参照)
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240312006/20240312006.html
  • (1) 国が主体となって候補海域を指定
     EEZは都道府県の管轄外であり、都道府県の関与がなくなるため、国が主体となって区域の設定・指定を行っていくとしている。
     具体的には、国が事前調査を実施した上で、広域の候補海域を指定し、同海域内で事業者から発電事業を実施する区域を自由に設定させ申請させる方式とする。その上で、①事業者からの申請に基づき国が事業計画等を審査し、 ②一定の要件に合致する場合には禁止を個別に解除し、洋上風力発電設備の設置を許可する仕組みとする。
  • (2) 英国の仕組みを参考に2段階方式で設置許可
     英国では、発電事業者を決定するための一段階目の海域リース入札の後、発電事業者が漁業者等の利害 関係者との協議を実施し、調整が整った場合には、二段階目である国からの支援を受け建設工事が可能となる仕組を導入している。こうした仕組みを参考に
    • ①一段階目として、事業者は、国が指定した広域の候補海域内において、発電事業を実施する海域を自由に設定し、国に申請。国はその内容を審査し、一定基準を満たす者に対し、仮の許可を付与する。
    • ②このあと事業者は、漁業者などの利害関係者との調整を行う。また、事業者はこれと並行して、当該海域に係る詳細調査を実施する。利害関係者との調整が整ったあと、事業者は、調整後の設置計画と区域図を国に申請する。国はその内容を審査し、基準を満たす者に対し、発電設備の設置許可を行うとしている。
    2段階方式として、以下の特長徴が示されている。
    • ①事業者が海洋調査・設計等終了後に入札に参加するスキームであるため、より精緻な計画の策定が可能
    • ②事業者が海洋調査・設計と並行して利害関係者の合意形成を実施するため、複数海域で大規模プロジェクトを同時に展開することが可能。リードタイムの短縮化が可能。
  • (3) 募集区域設定の考え方
     大規模かつ多量に案件形成をしていくために、国が事前調査 を実施した上で海域の指定を行う。
    • ①気象、海象その他の自然的条件等が優れていること
    • ②海洋環境の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと
    • ③区域内の漁業者等をはじめとした利害関係者からの意見を広く聴取するための公告縦覧に加えて、漁業、防衛レーダー、主要航路、海洋環境等について予め考慮するための各省協議を実施する。

EEZをすべて使えるようになれば、障害物がなく風況も良い洋上風力の最適地への大量導入(数百万kWの募集区域)が可能となり、メリットは計り知れないものと思われる。但し、北方4島水域のような係争水域があることや日本海側では中国との軋轢があることなど、外交的な問題も配慮の上、公募海域の絞り込みを行うことが不可欠である。

また、浮体式洋上風力発電装置の早期開発、発電した電力の送電網の検討、他方で系統の制約に関する検討、遠距離に設置される風車の設置、保守点検及び事故時に係る対応をどうするのか、外国企業の参入が想定される中、国内産業の育成を更に強化すべき、など様々な課題が残っており、実施に向けては時間がかかるものと推定される。

日本の領海等概念図(再掲)
(海上保安庁ホームページより)
日本の領海等概念図(再掲)
海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係わる海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案の概要
(経済産業省ホームページ ニュースリリース 2024.3.12より)
海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係わる海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案の概要
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