本事業は、地域貢献型小水力の開発事業であり、3地点の開発を予定、1地点目(657kW)が運転開始している。発電収益の一部を「地域振興基金」として拠出し、発電所が立地する国立公園の便益向上と地域を活性化・保全する事業に資することなどを目指している。
地域資源である水力を活かした持続可能な地域づくりや地域のオーナーシップの醸成による国立公園での新規水力開発の実現等、地域共生にふさわしい取組みとして評価された。
奥飛騨温泉郷は岐阜県北東部の高山市に位置する温泉地域である。この地域は穂高連峰を挟んで存在する上高地等とともに、中部山岳国立公園の重要な一画を占めている。2020年12月に運転を開始した安房谷水力発電所は中部山岳国立公園第二種特別地域内にあるが、「地域の活性化」及び「国立公園の利便性向上」に寄与する事業であると、環境省の判断により事業が許可されたプロジェクトである。
奥飛騨温泉郷は近年、地域経済が減退傾向にある一方、急峻な地形と豊富な降水量により我が国でも有数な小水力ポテンシャル高密度地域である。本プロジェクトは豊富な小水力発電資源を、秀逸な環境条件との調和を図りつつ、地域自らが開発し、便益を地域に還元することにより地域活性化のエンジンとすることを目的として実施されたものである。ここで重要なことは、事業全体を通じて、地域関係者にオーナーシップ意識(「おらが村の発電所」という意識)を醸成していくことである。基礎調査から発電所建設・運営及び国立公園内の環境保全作業にも、地元の方々が主体的に参画する、まさに、地元の地元による地元のための発電所建設が実現したのである。また、地域貢献型開発では、一地点開発で完結するのではなく、複数地点を逐次開発する地域一貫開発(第一期開発として安房谷水力発電所に続き、今年度中に他2地点の建設に着手する)の推進により効果の拡大と持続性向上を図っている。
本プロジェクトを含む第一期による地域経済への裨益効果は20年間で35.5億円であり、このうち、地域振興基金は売電収入の一部を、国立公園整備や地域文化活動等のための資金(第一期3地点で合計約19百万円/年)として20年間にわたり拠出するなど、今後とも、地域の資源を最大限活用し、長期を見据えた地域活性化のサポートを行っていく。
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