本事業は、エネルギーセンターにおいて設置された太陽光発電(85kW)、コジェネシステム(35kW×5)、熱源機器等により熱と電気を生産し、駅周辺地域の施設へ熱導管、自営線を介して供給する「地域エネルギー供給事業」である。
東日本大震災後の復興まちづくりに際して、地元と先進企業、産官学が連携して取組み、まちづくりの拠点となるアーバンデザインセンターを開所させるなど地域共生のモデルとなる事業として評価された。
福島県浜通りの最北端に位置する新地町において、大津波による壊滅的な被害からの復興に向け、新地駅周辺市街地復興整備事業」を進めてきた。町における環境共生型の復興まちづくりの中核となるのが、エネルギーの地産地消と災害に強い持続可能なまちづくりを目指す「新地町スマートコミュニティ事業」である。
本事業では、相馬LNG 基地の天然ガスを利用した環境に優しい「地産地消型エネルギー(電気・熱)」促進と、コージェネの自立運転と太陽光発電・蓄電池を組合せた「環境共生型の災害に強い地域づくり」を目指し、2019年春から、新地駅周辺のホテル・温浴等民間施設や商業施設、交流会館などの複数需要家に対して、自営線(マイクログリッド)と熱導管により電力と熱の供給を実施している。本事業は、福島県浜通り地域の産業基盤構築や新たなまちづくりを進める「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」において、エネルギー関連産業プロジェクトに位置付けられ、今後の復興地域や国内の地方都市におけるモデルとして期待されている。
事業の実現に際しては、産・官・学が連携した推進体制が大きな原動力となった。
町では、構想段階から国立環境研究所、東京大学と協定を締結しまちづくりを進め、「新地アーバンデザインセンター」(UDCしんち)の開所により、人材交流や留学生・研究者の来訪、町内学生の環境エネルギー教育など、地域活動の活性化に寄与している。また、地域のエネルギー会社などの民間企業と連携して、地方都市では実現が難しいとされる面的エネルギー利用を実現。町・民間企業等が出資した「新地スマートエナジー(株)」が運用を担い、運転員の地元からの雇用、電力・熱の売り上げの地域還流に繋げ、雇用や地域流通の創出に貢献している。
本事業は、需要家進出の遅れ、コロナウイルス感染症による需要家への影響などがあったが、運転に支障をきたすことなく運用を継続している。これから、コロナウイルスの終息とともに、需要施設の運営状況が回復することで、収支の確保と事業の安定化を見込んでいる。今後、駅前地区への新たな施設の進出やまちづくりの進展とともに、町、大学・研究所、ならびに民間企業の推進体制のもと、地産地消エネルギーを活用した事業などについて継続して取り組んでいく方針である。
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