本取組みは、酪農事業のレジリエンスを高めるなどを目的とした地域マイクログリッド事業である。
自営線を利用しないで、既設の配電線を活用してマイクログリッドを構築したチャレンジングな取り組みとして先進性が評価された。
また、地域内の牛糞尿のメタン発酵によるバイオマス発電と太陽光発電の電力を地産地消で活用しており、地域経済活性化に貢献するとともに災害時の電力安定供給に貢献している等優れた取組みとである。
事業を開始したばかりであるが、今後とも事業が継続し、再生可能エネルギーの導入拡大に結びつくことを期待する。
阿寒農業協同組合では、胆振東部地震でのブラックアウトを教訓として、農協組合員の酪農経営安定化に向けたBCP対策、牛糞尿の適正処理や地域活性化に向けた対策を検討している中、既存配電線を活用した電力地産地消事業であるマイクログリッドに着目。株式会社エコロミから事業計画作成、系統連系協議、設備導入に対する支援を受け、株式会社阿寒マイクログリッドを設立し、地域マイクログリッド事業を行っている。
本事業では、平常時は、大規模酪農施設敷地内に設置したメタン発酵バイオガス発電、太陽光発電、蓄電池でオンサイトPPA事業を行い収益を確保。基幹系統事故などの停電時には、北海道電力ネットワークの配電線を利用して、約20㎢のエリアにある釧路市指定避難所、酪農施設14施設、民家25軒へ電力供給する。
また、メタン発酵バイオガス発電で発生する排熱を酪農施設へ供給することで搾乳量増加に寄与したり、発酵残渣を再生敷料として利用するなど、単なる電力事業とせず、北海道内に多く存在する大規模酪農施設のモデルとなっている。さらに、発電プラント保守を可能な限りメーカーに依存せず、地元企業へ委託することで、電気代だけでなく保守費の地域内循環を行うこと、生活クラブ北海道と連携した再エネ教育など、地域事業としての意義も高い。
系統空き容量が無い中での再生可能エネルギーの利用拡大、地域レジリエンス強化への期待などの面から、全国でマイクログリッド事業への関心が高まる中、エコロミでは本事業で得られた知見を全国で利用して行きたい。
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