本取組みは、森林整備事業を核として様々な効果を創出している街おこしの事業である。個人では管理が困難になった森林を自治体が主体的に管理する森林信託事業を展開することにより地域での雇用創出や経済活性化を進めていることが評価された。再生可能エネルギーについては、中山間地域の自然資本を活用した小水力・木質バイオマス・小型風力・地中熱などを総合的に整備活用している。大規模な投資費用やリソースを持たない中山間地域として、社会資本の創出と雇用と経済循環を高めている。今後、更なる再生可能エネルギーの導入拡大を期待したい。
西粟倉村が2008年に地域のビジョンとして着想した「百年の森林構想」は、50年後の2058年に「上質な田舎」となることを目指したものであり、その長期的なビジョンを達成するために、地域ぐるみで2009年から「百年の森林づくり事業」や再生可能エネルギー事業、ローカルベンチャー育成事業、デジタル基盤の確立等の事業に取り組んでいる。
「百年の森林づくり事業」は、個人では管理が困難になった森林を自治体が協定に基づいて主体的に管理するという国内では新しい森林管理のモデルで、2020年には、三井住友信託銀行㈱と国内初の森林商事信託事業も開発した。また、2019年から SDGs未来都市(モデル事業都市)によって、森林を木材生産の場所だけでない地域の自然資本として、その価値最大化の取組である「百年の森林構想Ver2.0森林Re design」を推進している。
再生可能エネルギーでは、村の水力発電所3ヶ所(合計494kw)はFIT制度により売電を行い、その収益を森林整備や新たな木質バイオマスなどの再生可能エネルギーの導入に活用している。2023年にPPA事業を行う「西粟倉百年の森林でんき㈱」を設立し、太陽光発電による電力が自給できる体制を構築するとともに、新電力事業者を通じて西粟倉村産の電力を地域内に買い戻すことで公共施設等の電力は100%西粟倉村産の再エネ電力となる仕組や余剰電力をふるさと納税の返礼品として活用する仕組を構築した。再生可能エネルギーについては、環境モデル都市の取り組みから脱炭素先行地域にいたるまで、大規模ではなく、中山間地域の自然資本を活用した小水力・木質バイオマス・小型風力・地中熱などを総合的に整備活用する取組であり、大規模な投資費用やリソースを持たない中山間地域が、社会資本の創出と雇用と経済循環を高めているモデル事例となっている。
これまでの取組により、地域資本を活用したローカルベンチャー約50社が起業し、地域の総生産額は、8億円から22億円まで 拡大し、新たに創出した雇用は約220名となっている。また、Iターンにより地域に移住した人口も約230名となっており人口の17%を占めるまでになっている。特に若者・子育て世代が中心で生産人口でもあることから地域の活力の維持につながっており、経済だけでなく、消防・コミュニティ・文化・教育など社会の多様化に繋がっている。
【連絡先】