本取組みは、再生可能エネルギーを用いてトルエンから水素キャリアとなるメチルシクロヘキサンを直接製造する革新的な電解技術を開発した実証技術である。水素ガスを介さないメチルシクロヘキサンの製造と輸送に関する実証試験は、世界初でありオーストラリアで実施された。従来のプロセスと比較して大幅な初期投資の削減を可能にするなど先進性と将来性に優れている。今後は、再生可能エネルギーを経済的に導入できる海外において大型電解槽の開発などメチルシクロヘキサンの商用化プラントの実現に向けた展開を期待する。
ENEOSが開発したトルエンから水素キャリアであるメチルシクロヘキサン(MCH)を直接製造する新しい電解技術「直接 MCH電解合成技術(以下、Direct MCH®, ENEOS登録商標)」を開発し、再エネ適地であるオーストラリアに導入、技術実証を実施した取り組みである。
再エネは、近年海外の適地で発電コストが大幅に低下し、CO2削減だけでなく、経済性の観点でも普及が加速している。今後も、再エネの普及は拡大することが予想される一方で、エネルギー需給のミスマッチによる余剰電力の発生や再エネの適地が世界規模で偏在しているため主要消費地に送電できないことなどが課題となっている。したがって、これらのエネルギーを安価に貯蔵、輸送する技術が強く望まれている。ENEOSが開発したDirect MCH®技術は、再エネ由来の電気を電解反応によって水素キャリア(MCH)に直接変換するユニークな技術である。この技術は、これまでハンドリングが難しく、コストのネックとなっていた水素ガスを介さずに、MCHの製造ができる画期的な技術であり、水素キャリア製造にかかる設備費を大幅に削減することができる。ENEOSではオーストラリアの太陽光発電を使った世界初のグリーン水素輸送実証や世界初の商用電極サイズでのグリーンMCH製造実証を実施しており、オーストラリアで実証レベルでの導入活動を実施している。将来Direct MCH®技術の導入が拡大した場合、高いCO2削減が見込まれるだけでなく、電解槽プラント建設という裾野の広いビジネス構築が期待され、その経済効果も極めて大きい。
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