本取組みは、通常風車に比べて発電出力の増加が可能なレンズ風車をマルチレンズ方式へ展開し発電容量の規模を拡大させた先進的な技術開発である。
風車の羽根の周りにディフューザーとなる“輪っか”を設置し、カルマン渦によりローター下流の気圧が低下する風レンズ効果によって風が呼び込まれ発電出力が増大する独創的な技術である。ニーズに応じて複数のレンズ風車をマルチ化することで発電容量が選べるようにしているなど評価できる取組みである。今後は、コスト低減に向けた取組みよって小規模分散電源として広く普及していくことを期待する。
全世界で脱炭素の取組みが行われる中、風力発電は再生エネルギーの切り札と言われているが、現在の風力発電への取組みは、大型・大規模ウインドファームが主流となっている。
本来の「分散型エネルギー」の姿としては、中小容量の発電を多様に多く使った地元で発電し消費する地産地消型の受給体系が理想であり、地方を中心とした一般の方々がいろいろな形で参加でき、恩恵を受けるシステムが必要である。
しかしながらこのような中小規模の風力発電は、必然的に生活空間の近傍で運用されることとなり、「生活空間は風が弱い」「環境問題(騒音・バードストライク)が発生しやすい」「事故発生の時、ブレードの飛散等により住民に危害を加える可能性がある」などの問題があり、普及の障害となってきた。
この問題を解決するものとして「高性能レンズ風車とそのマルチシステム」を開発した。本システムは、下記の特徴を有している。
このように、レンズ風車は、風車としての種々の問題を解決するものとなっている。
それに加え、レンズ風車を複数組み合わせることで、レンズ間の隙間流れが加速し、背後の渦が強められ、ロータ背後の圧力場を低下させることで、発電出力をさらに10%~20%高める事ができる。
レンズ風車のマルチ化をおこなうと3基構成マルチレンズでは、全体発電出力が単独時の合計値よりさらに10%、5基構成で20%増加することが実証されている。一つのユニットを多数クラスタ化し、需要に応じた容量に拡大可能である。
この様な特徴を備えた「レンズ風車とそのマルチシステム」が普及する事は、分散型エネルギー社会の大きな推進に貢献する事や、更なるCO2削減の一翼を担う事となり、脱炭素社会の構築に貢献すると考えている。
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