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第17回 解説記事:「卒FITを見据えた太陽光発電の集約化と新たな事業モデル」

  
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1.はじめに

 2012年の固定価格買取制度(FIT)導入から10年以上が経過し、特に住宅用太陽光発電では多くの設備が卒FITを迎えています。卒FIT後の設備には、自家消費、蓄電池の併設、小売電気事業者等への売電などの選択肢がありますが、小規模・分散した設備を個別に扱うだけでは、電力システムとしての価値を十分に引き出すことが難しいと考えられます。
 そのため、アグリゲーターなどが、多数の太陽光発電設備を束ね、蓄電池、EV、需要側リソースと組み合わせることで、余剰電力の有効活用、需給調整、出力制御への対応、環境価値の提供などの新たな価値につなげることが期待されます。
 本稿ではFIT・FIP制度の変化を背景として整理しつつ、卒FIT太陽光を分散型電源として集約し、電力システムと需要家の双方に価値を生む事業モデルへの転換について、課題とともに解説します。

卒FITを見据えた太陽光発電の集約化と新たな事業モデル

 
 
 

2.卒FIT太陽光発電を取り巻く環境の変化

2-1 FIT制度の変遷

 FITは、再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定めた価格・期間で電気事業者が買い取る仕組みとして2012年に導入され、太陽光発電の普及を後押ししました。住宅用太陽光発電設備(10kW未満)については、2009年に始まった余剰電力買取制度を含め10年間、事業用太陽光発電設備(10kW以上)については20年間の固定価格での買取期間が設定されています。住宅用太陽光では、2019年11月以降、初期に導入された設備が順次、固定価格での買取期間の満了を迎えています。
 資源エネルギー庁によれば、調達期間を終了した太陽光発電設備は、2025年までに約200万件、約860万kWに達するとの推計が示されています(図1)。一般に太陽光パネルは20年以上にわたって発電を継続できるとされており、卒FIT後も自立的な電源として引き続き活用することが期待されています。
 
図1 買取期間終了後の太陽光発電設備の推移
図1 買取期間終了後の太陽光発電設備の推移
出典:資源エネルギー庁,「エネルギー白書2025」, 2025.6、
資源エネルギー庁,「小売電気事業者による再エネ電気の調達手法について」, 2023.5


 一方、2022年度に導入されたFIP制度は、FIT制度のように発電電力を一定価格で買い取るのではなく、再エネ発電事業者が卸電力市場や相対取引で電気を販売し、その市場収入に、基準価格と参照価格の差額を踏まえたプレミアムを上乗せする仕組みです。これにより、再エネ発電事業者に市場価格や需給状況を意識した発電を促すことが狙いとされています。ただし、住宅用太陽光発電に区分される出力10kW未満の設備はFIP制度の対象ではないため、新たな活用方法を考える必要があります。
 

2-2 卒FIT後の活用方法と課題

 卒FIT後の主な選択肢として、小売電気事業者等への余剰電力の売電や、発電した電気の自家消費がありますが、それぞれ、以下のような課題があります。
 卒FIT後の余剰電力の買取価格は事業者によって異なりますが、FIT初期の住宅用太陽光では40円/kWh前後で買い取られていたのに対し、卒FIT後は10円/kWh前後となる例が多く、売電による経済的メリットは大きく低下します。一方、自家消費を増やそうとしても、太陽光発電が多い昼間に家庭の電力需要が少ない場合には、発電した電力を使い切れず余剰が生じます。
 また、再エネの導入拡大に伴い、発電量が需要量を上回る時間帯には、需給バランスを維持するため太陽光・風力の出力制御が行われます。卒FIT後の住宅用太陽光も引き続き発電を続けられますが、各家庭が昼間の余剰電力をそのまま系統へ送り出すだけでは、太陽光発電が集中する時間帯の余剰を十分に減らすことができません。
 このため、蓄電池やEV、給湯設備等を活用し、余剰電力を別の時間帯に利用する工夫が重要となりますが、電力システム全体としての価値を最大化するためには、小規模・分散した太陽光や蓄電池等のリソースを集約、制御していく仕組みが必要となります。
 

2-3 分散型エネルギーリソース(DER)の動向

 第7次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの主力電源化と最大限の導入を進めるとともに、蓄電池やディマンド・リスポンス(DR)等を活用し、電力システムの柔軟性を確保していく方向性が示されています。また、その後の政策検討では、太陽光発電、蓄電池、EV、ヒートポンプ給湯機など、需要家や地域に分散して存在するエネルギーリソースをデジタル技術で統合的に制御し、供給力・調整力の確保や再エネ余剰電力の有効活用等につなげる方向性が示されました。
 これらを具体化するため、2025年12月に、経済産業省において、省エネルギー、再エネ、電力システムの各分野を横断する「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ」が設置されました。同ワーキンググループでは、DERは個々の需要家の自家消費・非常用電源にとどまらず、電力システム全体の需給調整や系統制約の緩和にも貢献する資源として、活用の拡大が検討されています。
 

3.太陽光の集約化と創出される価値

3-1 集約化の事業モデル

 ディマンド・リスポンス(DR)は、電力の需給状況や市場価格に応じて需要家側の電力使用量を変化させる取組です。需要を減らす「下げDR」に加え、再エネの余剰時に蓄電池やEVを充電し、給湯設備を稼働させる「上げDR」もあります。仮想発電所(VPP)は、太陽光、蓄電池、EV、需要設備などの分散型リソースを情報通信技術で束ね、あたかも一つの発電所のように統合制御する仕組みです。
 アグリゲーターは、需要家の太陽光発電や蓄電池等、様々なリソースを集約・制御して、電力市場や一般送配電事業者等との取引を担います(図2)。2022年からは、一定の要件を満たすアグリゲーターを「特定卸供給事業者」として位置付ける制度が施行され、アグリゲーション事業を担うための制度上の枠組みが整備されました。また、2025年11月にはERABガイドラインが改定され、需給調整市場における低圧リソースや機器個別計測の活用等を踏まえたルールが整理されています。
 事業モデルとしては、①卒FIT電力の買取りと小売供給の組み合わせ、②太陽光・蓄電池の遠隔制御、③EV・V2Hを含む充放電サービス、④VPPとしての市場参加、⑤地域新電力や自治体と連携した地産地消などが考えられます。
 

図2 アグリゲーターによるDER活用のイメージ
図2 アグリゲーターによるDER活用のイメージ
出典:資源エネルギー庁「分散型エネルギーを取り巻く状況と在り方について」、2025.12等を参考にIAEが作成
 

3-2 集約化により生まれる価値

 アグリゲーターによる集約化のメリットは、個々には小規模で変動の大きい太陽光発電、蓄電池等を多数束ねることで、全体として予測・制御可能な一定規模のリソースとして活用できる点にあります。
 需要家にとって、卒FIT後の太陽光発電に蓄電池を併設し、昼間の余剰電力を蓄えて必要な時間帯に自家消費することは有効な選択肢の一つです。さらに、アグリゲーターが複数のリソースを集約することで、個々の需要家では難しいDRや電力市場等への参加につなげやすくなります。需要家は、自ら複雑な市場取引や機器制御を行うことなく、卒FIT電力や蓄電池等の価値を活用でき、売電収入に加えて、電気料金の削減やDR参加による報酬などの便益が期待されます。
 電力システム側では、再エネ余剰時の上げDRによる余剰電力の出力制御量の低減、夕方など需給が厳しい時間帯の放電・需要抑制による負荷平準化、電力系統の混雑緩和などが期待されます。地域の配電系統の混雑をDER制御で緩和できれば、設備増強を回避できる可能性もあります。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のFLEX DER実証では、配電用変電所の混雑に対し、アグリゲーターが蓄電池等を制御する取引の仕組みが検討されました。
 

3-3 普及に向けた取組み

 一般家庭は、一件当たりのDRの量が小さく、規模の大きい工場等と比較してDRリソースの活用が遅れています。家庭におけるDRでは、需要家の行動変容だけに依存した参加には限界があり、遠隔制御や自動制御へ高度化することが課題とされています。
 低圧のDRリソースを活用するため、住宅等に設置される様々な機器に通信接続機能や外部制御機能等を備える「DRready」環境の構築が検討されています。DRreadyとは、家庭用蓄電池、EV・充放電設備、ヒートポンプ給湯機などの需要家側機器を、外部のアグリゲーター等から通信を介して制御し、DRに活用できるようにする考え方です(図3)。DRready機器とは、こうしたDRへの活用を前提として、外部との通信接続、運転状態等の情報取得、充放電や運転時間等の外部制御に対応できる機器を指します。
 アグリゲーターは、これらの機器から状態情報を取得し、電力の需給状況などに応じて充放電や稼働時間を制御します。これにより、家庭内の自家消費の最適化に加え、電力需要のピーク抑制や再エネ余剰時の需要創出、需給調整など、電力システムでの活用が可能になります。そのため、DRready機器の普及に向けては、通信接続や外部制御、状態情報の取得、セキュリティの確保に加え、機器間の標準化・相互運用性を高めることが重要です。
 
図3  DRready機器を活用した家庭のエネルギーリソースの遠隔制御イメージ
図3  DRready機器を活用した家庭のエネルギーリソースの遠隔制御イメージ
出典:経済産業省「DRready要件に関する勉強会資料」等を参考にIAEが作成

  

4.おわりに ~今後の展望~

 卒FIT太陽光の課題は、買取価格の低下だけではありません。発電が昼間に集中することによる余剰電力の価値低下や、再エネ導入拡大に伴う出力制御なども含め、総合的に捉える必要があります。
 また、アグリゲーターの役割は、分散したエネルギーリソースを単に束ねることではありません。各家庭に分散する太陽光、蓄電池、EV、需要設備等の状態を把握し、発電量や需要量を予測・制御することで、個々の小規模設備を電力システムで活用可能な資源へ転換することにあります。
 一方、一般家庭のDRを広げていくためには、遠隔制御等の技術環境を整えるだけでなく、需要家が参加するメリットを明確にすることが重要です。電気料金の削減、蓄電池やEVの有効活用、非常時の安心など、需要家が実感できる便益を示すとともに、参加方法や制御条件、利益の還元方法を分かりやすく設計することが、卒FIT太陽光を継続的に活用する事業モデルの普及につながります。

執筆:一般財団法人エネルギー総合工学研究所

 

9月解説記事のご案内

 9月の解説記事は「ペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けた動向」です。
 太陽光発電のさらなる導入拡大に向けては、既存のシリコン太陽電池に加え、新たな設置場所への適用や発電効率向上を可能とする次世代太陽光発電技術の開発が重要となっています。中でもペロブスカイト太陽電池は、軽量・柔軟という特長を有し、建物の壁面や耐荷重制約のある屋根などへの設置が期待され、重点的な技術開発・実証が進められています。本稿ではペロブスカイト太陽電池の特徴、開発動向、実証事例を整理するとともに、技術的課題、コスト低減、国の支援など、今後の社会実装に向けた取組と課題について解説します。