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第16回 解説記事:テーマ「地域と共生する太陽光発電へ(メガソーラー対策パッケージの概要)」

  
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1.はじめに

 第7次エネルギー基本計画では、2040年度に向けて再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する方針が示されており、太陽光発電はその中でも最大の導入量を担う電源として位置付けられています。一方で、大規模太陽光発電事業(メガソーラー)については、森林開発や土砂災害リスク、景観への影響、事業終了後の設備撤去などをめぐり、地域との摩擦が各地で顕在化しています。
 こうした状況を踏まえ、政府は2025年12月に「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」を策定しました。同パッケージでは、関係省庁が連携し、不適切事案に対する法的規制の強化、地域の取組との連携強化、地域共生型事業への支援の重点化などの方針を示しています。そこで、本稿では、国内における太陽光発電の導入状況を概観するとともに、対策パッケージの概要を紹介し、地域と共生する太陽光発電の実現に向けた取組について解説します。

地域と共生する太陽光発電へ(メガソーラー対策パッケージの概要)

 
 
 

2.国内における太陽光発電の導入状況

 2012年に開始されたFIT(固定価格買取制度)は、我が国の太陽光発電の普及を大きく後押ししました。固定価格で一定期間の買取が保証されたことにより、事業収益の予見可能性が高まりました。その結果、多くの事業者や投資家が市場へ参入し、太陽光発電の導入量は急速に拡大しました。その後、買取価格の段階的な引下げやFIP制度への移行が進められたものの、太陽光発電は再生可能エネルギーの中で最も多く導入されている電源となっています。
 資源エネルギー庁によると、2025年12月末時点のFIT・FIP制度による導入量は72.4GWであり、住宅用が12.6GW、非住宅用が59.8GWを占めています。約83%が非住宅用であり、産業用設備やメガソーラーなどが導入拡大を牽引してきたことが分かります。
 
図1 国内における太陽光発電導入量の推移
図1 国内における太陽光発電導入量の推移
出典:資源エネルギー庁, 「経済産業省説明資料」, 2026.6 をもとに作成

 


 図1に示すとおり、FIT制度の開始後、国内の太陽光発電導入量は大幅に増加しました。一方、年度ごとの新規導入量を見ると、近年は導入ペースが緩やかになっています。
 その背景には、再生可能エネルギーの適地の確保、系統制約や出力制御への対応、建設費等の上昇、地域住民や地方公共団体との合意形成など、複数の課題があります。特に地上設置型の太陽光発電では、森林伐採や造成を伴う場合があり、自然環境、景観、防災などの観点から地域の懸念につながることがあります。
 また、日本は国土面積当たりの太陽光発電導入容量が主要国の中でも高い水準にあります(図2)。限られた国土の中で高密度に太陽光発電設備が設置されてきたことが分かります。
 

図2 主要国における国土面積当たりの太陽光設備容量
図2 主要国における国土面積当たりの太陽光設備容量
出典:資源エネルギー庁, 「エネルギー基本計画」をもっと読み解く③:大幅な拡大をめざす再生可能エネルギー, 2025.11
 
 こうした状況の下、今後の太陽光発電の導入拡大には、単に設備容量を増加させるだけでなく、地域との共生を図りながら導入を進めることが、これまで以上に重要になります。第7次エネルギー基本計画でも、「地域との共生」「国民負担の抑制」「出力変動への対応」「イノベーションの加速とサプライチェーンの構築」「使用済太陽光パネルへの対応」などが、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた重要課題として示されています。

 

3.メガソーラーに関する対策パッケージ

3-1 対策パッケージ策定の背景

 第7次エネルギー基本計画では、2040年度に向けて再生可能エネルギーを最大の電源とする方針が示されており、太陽光発電はその中で最も大きな電源割合を担うことが見込まれています。また、DXやGXの進展などを背景に、今後も電力需要の増加が見込まれており、脱炭素電源を安定的に確保する重要性が一層高まっています。
 一方、メガソーラーでは、森林開発や土砂災害リスク、景観への影響、設備の安全管理、事業終了後の設備撤去などをめぐる課題が各地で顕在化しました。
こうした状況を踏まえ、政府は土地造成、設備保安、自然環境、景観などに関係する法令を総点検し、2025年12月23日に「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」を策定しました。本パッケージでは、次の3つを柱として、地域への配慮を前提に再生可能エネルギーを導入する方向性が示されています(図3)。

  1. 不適切事案に対する法的規制の強化等
  2. 地域の取組との連携強化
  3. 地域共生型への支援の重点化
 2026年に入ってからは、対策パッケージを踏まえ、関係省庁において制度改正や制度運用の見直し、新たな連携体制の構築などが順次進められています。以下では、3つの柱に沿って、その概要と主な取組を紹介します。

 

図3 メガソーラーに関する対策パッケージの概要
図3 メガソーラーに関する対策パッケージの概要
出典:内閣官房,「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」, 2025.12をもとに作成

 
 

3-2 第1の柱 不適切事案に対する法的規制の強化等

 第1の柱では、不適切な太陽光発電事業を未然に防止するため、自然環境、安全性、景観などに関係する法令の見直しや制度運用の強化が掲げられています。これは、事業計画の策定から運転・維持管理、廃止・撤去までのライフサイクル全体を通じて、適正な事業実施を確保することを目的としています。
 背景には、豪雨等による土砂流出や設備の損壊・流出・飛散、歴史的景観や自然景観への影響(図4)など、全国各地でさまざまな事案が生じてきたことがあります。中には、自治体への苦情や事業計画の見直し、行政訴訟に発展したケースもあり、地域との共生や法令遵守の重要性が改めて認識されるようになりました。
 

図4 メガソーラー導入に伴う地域課題の例
図4 メガソーラー導入に伴う地域課題の例
出典:資源エネルギー庁, 「日本のエネルギー2025年度版「エネルギーの今を知る10の質問」」,2026.4
 
 このような状況を踏まえ、環境省では2026年1月から「太陽光発電事業等の環境影響評価に関する検討会」を設置しました。現在、出力4万kW以上を対象とし、出力3万kW以上4万kW未満については個別に実施の要否を判断している環境影響評価制度について、対象規模をはじめとする制度の見直しが進められています。
 また、安全対策についても制度強化が進められています。近年の豪雨災害や地震を踏まえ、太陽光発電設備の構造安全性が改めて注目されています。こうした中、2026年7月には、太陽電池発電設備の設計不備による事故を防止するため、その支持物等を第三者機関(登録適合性確認機関)による工事前の技術基準適合性確認の対象に追加する改正電気事業法が成立しました。また、土地造成を伴う事業については、盛土規制法など関係法令の適切な運用を通じて、安全性の確保が図られています
 さらに、サイバーセキュリティ強化のため、通信機能を有するPCSや遠隔監視装置などについて、JC-STAR(IoT製品のセキュリティ適合性評価制度)★1を取得した機器の利用を系統連系の要件とすることが決定されています。
FIT・FIP制度についても、法令違反が確認された認定事業者への交付金停止など、制度運用の厳格化が進められています。
 さらに、2030年代後半以降に大量廃棄が見込まれる使用済太陽光パネルについては、適切な処理体制の確保や資源の有効利用が課題となっています。これを受け、2026年6月には「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」が公布され、再資源化等を促進する制度が整備されました。図5は、使用済太陽光パネルのリユース・リサイクルの流れを示したものです。
 
図5 太陽光発電設備のリユース・リサイクルの流れ
図5 太陽光発電設備のリユース・リサイクルの流れ
出典:環境省,「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)」,2024.08
 
 

3-3 第2の柱 地域の取組との連携強化

 第2の柱では、法令の整備だけではなく、国と地方公共団体が連携し、それぞれの地域の実情に応じた制度運用を進めることが掲げられています。
 地域課題は、地形や土地利用、自然環境、地域住民の意向などによって大きく異なるため、全国一律の制度だけでは十分に対応できない場合があります。このため、地方公共団体の取組を国が支援し、地域との共生を図る体制づくりが重視されています。
 その中心となる取組が「再エネ地域共生連絡会議」です。同会議には経済産業省、環境省、総務省をはじめとする関係府省や地方三団体が参加し、2026年3月には第1回会合が開催されました。条例や法定外税の運用事例、地域に裨益する仕組みや実効的な取組事例などについて情報共有が行われ、自治体における先進的な取組の横展開が図られています。さらに、2026年4月には全国の自治体職員を対象とした「再エネ地域共生連絡会議 全国会議」が開催され、メガソーラー対策パッケージに基づく各施策の実施状況や制度運用上の留意点などについて説明・情報共有が行われました。
 地方公共団体が景観法や環境影響評価条例などを適切に活用できるよう、各種マニュアルの整備も進められています。
 監視体制についても強化が進められています。これまでFIT・FIP認定事業を中心に運用されてきた「再エネGメン」や関係法令違反通報制度については、非FIT・非FIP事業にも対象を拡大する取組が進められています。これにより、国内の太陽光発電事業全体を対象とした監視・指導体制の構築が期待されています。

 

3-4 第3の柱 地域共生型への支援の重点化

 第3の柱では、不適切な事業への規制を強化する一方で、地域との共生が図られた望ましい事業や次世代技術への支援を重点化することが示されています。
 これまでのFIT制度では、再生可能エネルギーの導入量拡大が政策の中心でした。しかし、導入量を重視した支援だけでは、地域との共生や長期的な事業運営を十分に評価できないという課題が明らかになりました。そのため、現在では長期的な維持管理や持続可能な事業運営を重視した制度運用へと重点が移りつつあります。
 その象徴的な取組が、事業用の地上設置型太陽光発電への支援の見直しです。政府は2027年度以降のFIT・FIP制度について、新規の事業用の地上設置型太陽光発電を支援対象から除外します。土地造成を伴わず地域との調和を図りやすい屋根設置型太陽光発電については、公共施設や工場、倉庫などへの導入支援が重点化される方向です。また、軽量で柔軟性を有するペロブスカイト太陽電池については、建物の屋根や壁面に加え、空港の空き地や道路法面など未利用空間への導入も想定した研究開発・実証支援が進められているほか、高効率化が期待されるタンデム型太陽電池など、次世代太陽電池技術の開発・実用化に向けた支援も拡充されています。
 さらに、長期にわたり設備を適切に維持管理し、地域との対話にも積極的に取り組む事業者を評価する「長期安定適格太陽光発電事業者制度」の運用が開始されており、2026年1月には初回の認定として3事業者が認定されました。

 

4.おわりに ~今後の展望~

 「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」の成立・公布、「再エネ地域共生連絡会議」の開催・運営、環境影響評価制度の規模要件の見直しや、2027年度以降の地上設置型事業用太陽光発電に対するFIT・FIP支援の対象外化など、対策パッケージに盛り込まれた施策がどのように定着し、その効果を発揮していくかが重要なポイントとなります。また、屋根設置型太陽光発電やペロブスカイト太陽電池など、地域との共生を図りやすい導入形態や次世代技術への支援も注目すべき動向といえます。
 太陽光発電政策は、「どれだけ導入するか」という量の拡大を重視する段階から、「どこに、どのように導入し、誰が長期的な責任を担うのか」という質をより重視する段階へと移りつつあります。地域との共生を太陽光発電導入の単なる制約ではなく、設備を長期安定的な電源として社会に定着させるための重要な前提として位置付ける必要があります。

執筆:一般財団法人エネルギー総合工学研究所

 

8月解説記事のご案内

 8月の解説記事は「卒FITを見据えた太陽光発電の集約化と新たな事業モデル」です。2012年の固定価格買取制度(FIT)導入から10年以上が経過し、特に住宅用太陽光発電では多くの設備が卒FITを迎えています。卒FIT後の設備は、自家消費、蓄電池併設、小売電気事業者等への売電などの選択肢がありますが、小規模・分散した設備を個別に扱うだけでは、電力システムとしての価値を十分に引き出すことが難しいです。そのため、アグリゲーターなどが、多数の太陽光発電を束ね、蓄電池、EV、需要側リソースと組み合わせることで、余剰電力の有効活用、需給調整、出力制御への対応、環境価値の提供などの新たな価値につなげることが期待されます。本稿ではFIT・FIP制度の変化を背景として整理しつつ、卒FIT太陽光を分散型電源として集約し、電力システムと需要家の双方に価値を生む事業モデルへの転換について、課題とともに解説します。