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新エネルギーの導入促進に関する緊急提言


一般財団法人新エネルギー財団は、例年の新エネルギー産業会議(議長:牛山 泉 足利大学顧問)政策提言に先立ち、今般、同会議緊急提言をとりまとめました。再生可能エネルギー導入促進の課題とその解決に向けた方策について、「太陽エネルギー」「風力発電」、「水力発電」、「地熱発電」「バイオマスエネルギー」の5分野を関係委員会で精力的に検討した結果を基にした提言です。

ここではその概要をご紹介いたします。

※この概要は下記PDFからもご覧頂けます

新エネルギーの導入促進に関する緊急提言概要


新エネルギーの導入促進に関する緊急提言 概要


現在、政府において第 7 次エネルギー基本計画の検討が進められている。現行の第6 次エネルギー基本計画においては、2030 年度の再生可能エネルギー比率を36~38%にすることとされているが、次期の第 7 次エネルギー基本計画においては、2050年カーボンニュートラルへの中間目標として 2040 年度の再生可能エネルギー比率をどのように積み増すかが大きな論点となっている。

2040 年に向けては、現行の 2030 年度目標を確実に達成するとともに、2030 年以降については、拡大余地の大きいペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力発電といった次世代の技術の開発導入に取り組んでいくこととなる。

このような考え方の下、新エネルギー産業会議に設置された各委員会において、2030 年目標に向けた電源ごとに進捗状況を検討した。その結果、太陽光やバイオマスについては、概ね目標達成可能な水準で導入が進んでいること、風力については、案件形成は進んでいるものの第 6 次エネルギー基本計画策定時には明確ではなかった課題が顕在化し運転開始時期の遅延が懸念されていること、地熱については、進捗が遅れ目標を大きく下回る水準となっていることなどが認められた。

各委員会での検討の中で、目標達成の問題とともに、各電源ともに導入推進には多くの課題があることが明らかになった。これらの課題の解決を図りつつ、再生可能エネルギーの推進を図るため、新エネルギー産業会議として、第 7 次エネルギー基本計画の策定に向けた課題について緊急提言を行う。

 

1.太陽光発電 

  1.  FIT の認定に加え、PPA による非 FIT の案件が増加しており、これを加えると2030 年目標達成が視野に入るレベルで導入が推移しているが、目標達成のためには、多くの課題があり、官民を挙げた取組が重要である。
  2.  太陽光発電などの変動電源の増加に伴い、系統混雑や出力制御といった問題が引き起こされていることから、緊急提言では、蓄電池活用等を含め、分散型電力システムの下での住宅向けの電力サービスのあり方に絞って提言する。
  3.  電力事業は、大規模な発電所から送配電網を通じて需要家に電気を送り、住宅の冷暖房・給湯や各種の家電製品に必要な電力需要に合わせて供給を調整して電力サービスを提供していた時代から、需要家の住宅に太陽光発電設備を設置し、蓄電池を活用し、さらに需要側の電気利用の調整も活用しながら、電力サービスを提供する時代へと移り変わりつつある。
  4.  変動電源による分散型電力システムが直面する課題と、これに対する事業者の取組から、今後の方向性を検討した結果として、住宅用PVの普及拡大策として、「分散型電力システムにおける住宅へのエネルギー供給の新たなビジネスモデルの構築」を提言する。新たなビジネスモデルは、「太陽光発電(屋根置き、バルコニー、カーポートなど)」、「自家消費型高効率給湯器(エコキュート、ハイブリッド給湯器)」、「蓄電池」、「EV充電(V2H)」、「ZEH」を構成要素とし、第三者保有モデルも活用して、単に設備や機器を提供するのではなく、トータルに電力サービスを供給する新たなビジネスモデルを目指すものとする必要があり、これに向けた支援策の充実強化が必要不可欠である。
 

2.風力発電

  1. 風力発電分野はここ数年で著しく進展。向こう 20 年から 30 年で、主力電力としての国産風力エネルギー供給の確度が非常に高い状況にある。
  2. このような風力発電分野の概況において、風力委員会では、陸上風力発電における 2030 年 17.9GW、2040 年 35GW、2050 年 41GW を、洋上風力発電においては 2040 年 35~45GW の目標の確実化、風力発電の導入拡大の維持推進を強く提言するとともに、風力発電導入に伴う地域発展および国益の最大化を目指し、それに合わせた社会システムの転換、特に国内産業分野の転換も見据えた目標の設定(2050 年 159GW~690GW)と風力産業拡大政策検討を求める。
    ①陸上風力については、適切な導入を支援するための各種規制緩和、地域との共生が目標達成に向けた重要な課題となる。
    ②洋上風力発電は公募済みの案件が適切に運転開始へと進めば、目標に向かって導入が進むものと推定される。浮体式洋上風力をはじめ世界に後れをとることなく導入拡大の目標設定を求める。
    ③陸上・洋上いずれにおいても、短期的には、インフレや資材価格の高騰による事業コストの増大が事業進捗を妨げており、基準価格の見直し(価格調整スキーム)が検討課題となっている。中長期的には、発電所規模の大規模化やエネルギーの地域偏在性への対応、例えば系統の整備が案件の成就を左右する大きな問題。具体的かつ計画的な政策指針を求めたい。
    ④国内風車メーカー不在の影響が強く懸念されており、国内における産業基盤作りや人材育成も大きな課題である。
 

3.水力発電

  1.  水力発電の 2030 年目標において、中小水力導入量 10.4GW/発電電力量980 億 kWh とされている。2024 年 3 月現在で中小水力導入量 10.0GW/発電電力量 768 億 kWh であり、目標達成には、中小水力導入量 0.4GW/発電電力量 212 億 kWh の更なる導入が必要である。
  2. 水力発電の特性に応じた制度・仕組み作りの必要性既存の水力発電所および未開発の水力ポテンシャルを最大限に活用するため、初期投資の負担が大きく、資本回収には長期に亘る安定した経済性の確保が必要になるという水力発電の特性に対応した柔軟なルール作りを行う必要がある。再生可能エネルギーの主力電源化に当たっては、系統の安定化・調整に寄与可能な水力発電の役割は大きく、その運用と保全を支える水力発電業界(発電事業者、メーカー、施工会社等)が長期に亘り安定して事業継続に取り組める制度・仕組み作りが望まれる。この観点から、FIT/FIP制度の期間を水力発電の耐用年数に合わせて 40 年間とすることも含め、水力発電の特性に応じた制度・仕組み作りの検討を要望する。
  3.  揚水発電所や高経年発電所への支援策強化電力需要予想が増加に転じ、中長期的な調整力の確保が課題となる中、建設に期間を要す揚水発電所への支援の強化が必要である。高経年発電所の維持・再開発が電力量の増加を支えていることから、「既存設備有効活用支援事業」、「スマート保安実証支援事業費補助金(技術実証支援)」等の運用改善を通じて利用拡大を図ることが望まれる。
 

4.地熱発電

  1. 地熱発電は進捗が遅れ、目標を大きく下回る水準となっている。地熱発電の2030 年導入目標量は 1,480MW(第 6 次エネルギー基本計画) とされているところ、2023 年度時点での国内総導入量は 513MW であり、実現可能性の高い現在建設中や調査中のものを含めても 600MW 足らずと非常に厳しい状況にある。開発事業者を中心とした日本地熱協会(JGA)のアンケート結果(7/17第 64 回再エネ大量小委ヒアリング資料)によると、現状、2030 年までの上積みの見込みとしては約 40MW(4 件)、2040 年まで延長し検討段階のものを含めても約 600MW(34 件)と予想されている。
  2. 新規開発については、国有林野の規制問題や資源量調査に要する膨大な費用が課題となっている。ポンテンシャルはあっても、国立公園の核心部により近く規制との調整に難航すること、酸性熱水の存在で技術的難易度が上がりコスト増となる場合があること、さらに資材費の高騰により収益性が悪化していることといった問題がある。
  3. 既存発電所についても、発電量の増量や維持のため補充井掘削が必要になるが、既開発地点であっても地下リスクは大きく、掘削の成否の不確実性のために追加投資に簡単には踏み切れないといった問題がある。
  4. このように、現状の制度や支援策では、地熱開発を巡る様々なリスクや事業の特性に応じた十分な対応が取られているとは言えず、このため、調査・開発が難航している。地熱資源のポテンシャルを活かすためには、林野庁との省庁間連携による規制見直し、JOGMEC 支援制度の抜本拡充に取り組み、地熱開発を強力に推進することが必要である。
 

5.バイオマス発電

  1. バイオマス発電の導入は順調であり、2030 年導入目標の達成は可能と見込まれる。
  2. 一方、バイオマス発電の原料は輸入バイオマス(「パームヤシ殻」を含む)に多くを依存している。原料価格の高騰や原料調達ルールに関する不確実性の問題に直面しており、その状況次第では、事業の継続が困難になるリスクも十分に考えられる。2030 年以降もバイオマス発電設備容量を維持するため、国産バイオマスの一層の振興と輸入バイオマス調達に関する持続可能性の確保に取り組むことが求められる。
  3. バイオマス利活用としては、発電のみに頼ることなく、熱利用によってエネルギー利用効率および事業性の向上が見込まれる。再エネ熱でもあるバイオマスの熱利用の推進が求められる。


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新エネルギーの導入促進に関する緊急提言概要