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第10回 解説記事:テーマ「次世代電力ネットワークの構築」
1月号は、「次世代電力ネットワークの構築」に焦点を当てます。再生可能エネルギーの主力電源化を進めるため、電力ネットワークの次世代化が不可欠です。地域間連系線や地内基幹系統の増強、配電系統を含む需給運用の高度化、分散型リソースの活用など、本稿では、第7次エネ基に示された方向性を踏まえ、次世代電力ネットワークの全体像と、その構築に向けた主要な論点について解説します。
1.次世代電力ネットワークの構築に向けた基本的方向性
(1)系統整備と需給運用の高度化による安定供給と脱炭素の両立
第7次エネ基においては、電力の安定供給を確保しつつ、電力システムの脱炭素化を進めるためには、電力ネットワークの次世代化を進めることが不可欠とされています。自然災害時などのレジリエンス強化と再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の最大限の活用を実現しつつ、電力の将来需要を見据えタイムリーな電力供給を可能とするためには、既存系統の最大限活用や電力広域的運営推進機関が策定した広域連系系統のマスタープランを踏まえた地域間連系線の整備、地内基幹系統などの増強を着実に進める必要があります。図1にそのイメージを示します。加えて、再エネの最大限導入を進める中で、変動性再エネの導入量がさらに増加することに伴い必要となる調整力を確保し、系統・需給運用の高度化を進めることで、再エネの変動性への柔軟性も確保した、次世代の電力ネットワークの構築を推進する必要があります。
![]() 図1 系統増強の検討イメージ
出典:電力広域的運営推進機関, 「電力ネットワークのマスタープラン」,(2026.1閲覧) をもとに作成 |
(2)広域機関の役割強化と分散型リソース・災害対応の推進
次世代電力ネットワークの構築に向けては、系統整備に加え、需給運用、電源投資などにおいて、電力広域的運営推進機関(広域機関)が重要な役割を果たします。図2は広域機関の役割と関係機関を示します。また、地域の分散型エネルギーリソースを活用した取組を進めることは、地方創生にも資するものです。さらに、能登半島地震などの自然災害に起因する大規模停電などを踏まえて、停電復旧への対応や要因分析を踏まえた事業者間連携の強化などにより、安定供給確保に向けた対応を着実に進める必要があります。
![]() 図2 広域機関の役割と関係機関
出典:電力広域的運営推進機関, 「広域機関とは」,(2026.1閲覧) をもとに作成 |
2. 電力ネットワーク(系統)の増強
(1)地域間連系線や地内基幹系統などの整備
これまで、既存系統を効率的に活用するため、ノンファーム型接続の適用などにより、活用可能な送電容量の拡大を進めてきました。このような取組を推進しつつ、再エネの更なる導入拡大と電力の安定供給を実現するため、系統の増強を進める必要があります。地域間連系線については、再エネの導入などに計画的に対応するため、広域連系系統のマスタープランを踏まえて整備を進め、必要な費用を再エネ賦課金や全国の託送料金などを通じて負担する仕組みが導入されています。こうした制度の下、北海道・本州間の海底直流送電線や中国九州間連系設備(関門連系線)の整備など、今後10年間程度で、過去10年間と比べて大規模な整備が進められる計画となっています。また、再エネを最大限活用するとともに、自然災害時等のレジリエンスを強化し、電力の安定供給を確保するためには、地内基幹系統などを効率的に整備することも重要です。このため、地域間連系線と一体的に整備するものや広域的取引に資するものについては、広域機関の関与の下で、一般送配電事業者が整備を進めていきます。再エネの導入などに資する地内基幹系統についても、より効率的・計画的な整備を進めるとともに、エリアを越えた費用負担の仕組みの検討が行われます。図3は地域間連系線の整備の状況と今後の方向性を示します。
![]() 図3 地域間連系線の整備の状況と今後の方向性
出典:資源エネルギー庁, 「電力ネットワークの次世代化について」,2025.5 をもとに作成 |
(2)局地的な大規模需要の立地を見据えた送配電網の整備
データセンターなどの国内投資や電化を通じた製造プロセスなどの脱炭素化を促進するためには、新たな大規模需要に対し、迅速かつ確実に電力供給を行う必要があります。このため、データセンターなどの系統接続申込みの規律を確保するとともに、一般送配電事業者が早期に電力供給を開始できる場所を示した「ウェルカムゾーンマップ」を通じた立地誘導が進められています。図4は四国エリアにおけるウェルカムゾーンマップの例です。また、大規模需要を効率的な系統整備などの観点での適地に誘導するため、一般送配電事業者が地方公共団体などの関係機関と連携し、先行的・計画的な系統整備を促す仕組みが検討されています。合わせて、先行的な系統整備に係る費用が確実に回収される仕組みや、整備費用が大規模になった場合の費用負担の在り方についての検討が必要です。
![]() 図4 四国電力送配電のウェルカムゾーンマップ
出典:資源エネルギー庁, 「電力ネットワークの次世代化について」,2024.9 をもとに作成 |
(3)送配電網の整備に係る資金調達等の課題への対応
一般送配電事業者は、これまでも地域間連系線の整備を含め巨額の投資を行ってきましたが、今後は脱炭素化や電力の安定供給確保に向けた投資や既存設備の更新などにより、さらに大規模な投資が必要となります。一方で、大規模投資は工期が長く、費用回収に時間を要することから、資金調達が制約となり、必要な投資が遅れる懸念があります。このため、北海道・本州間の海底直流送電や大規模地内基幹系統などへの機動的な投資が重要となる中、託送料金制度における費用回収の在り方や、資金を量的に確保するための仕組みなど、制度的な対応を含めた資金調達環境の整備についての検討が必要となります。図5に系統整備に必要な資金調達などの環境整備のイメージを示します。これらに加え、大規模な系統整備に不可欠な送配電分野の施工力の確保も重要な課題です。
![]() 図5 大規模な系統整備に必要な資金調達等の環境整備
出典:資源エネルギー庁, 「送配電に関する費用回収の在り方について」,2022.11 をもとに作成 |
3.配電系統を含む需給運用の高度化と分散型リソースの活用
(1)配電系統を含めた需給運用の高度化
太陽光発電、蓄電池、電気自動車(EV)などの分散型エネルギーリソース(DER)は、主に配電系統に接続されます。このため、配電系統において電圧上昇や潮流の複雑化といった新たな課題が顕在化しています。これまでの送電系統を中心とした需給運用に加えて、配電系統を含めたネットワーク全体で需給を調整していくことが必要となっています。第7次エネ基においては、再エネの主力電源化を進める上で、需給運用の高度化が重要とされています。これに対応するため、スマートメーターや各種センサーなどから得られる情報を活用し、需要の見通しや系統状況を踏まえた、よりきめ細かな運用を行う取組が進められています。こうした取組を通じて、電力の流れを的確に把握し、既存インフラを最大限に活用していくことが求められています。
(2)分散型リソースの本格活用と需要側参加の拡大
これまで需要家側に設置されてきた蓄電池や自家発電設備は、主に非常用やコスト削減を目的として利用されてきました。しかし今後は、これらの分散型エネルギーリソースが、電力システム全体の需給バランスを調整する供給力・調整力として、重要な役割を担うことが期待されています。第7次エネ基では、蓄電池やディマンド・リスポンス(DR)などを電力システムの柔軟性のある資源として活用し、再エネの大量導入と安定供給を両立させる方向性が示されています。図6にDRの実施イメージを示します。これらにより、需要家はエネルギーの消費者から、電力システムの安定化にも寄与する消費・発電者へと変貌します。
![]() 図6 DRの実施イメージ
出典:資源エネルギー庁, 「ディマンド・リスポンスの活用で広がる、電力需給調整の新ビジネス」,2022.12 をもとに作成 |
4.まとめ:2040年に向けた統合的電力ネットワーク像
一層の再エネが導入される2040年に向けて、電力ネットワークは次世代型へと転換する必要があります。北海道や九州の再エネを大消費地へ送る地域間連系線と、地域内でエネルギーを地産地消し循環させる地域内系統が統合されたシステムです。ここでは、大規模電源から、家庭内の太陽光発電や蓄電池といった分散型リソースまでが統合されていきます。供給側だけでなく需要側も調整力を提供し、需給を最適化することで、脱炭素化、安定供給、そして経済性を高次元で実現する社会インフラとなることが期待されます。
2月解説記事のご案内
2月の解説記事では、第7次エネ基における水素の位置付けを整理するとともに、その役割と社会実装に向けた課題、今後の論点を解説する予定です。





